※熊本地震発生直後の2016年の記事を振り返ります。

倒壊の熊本東聖書キリスト教会 神の計画信じ「最後の礼拝」

写真提供=熊本東聖書キリスト教会

写真提供=熊本東聖書キリスト教会3

写真提供=熊本東聖書キリスト教会.2

 

熊本地震災害発生から3週目の日曜日となった5月1日、倒壊したバイブル・プロテスタント・熊本東聖書キリスト教会(豊世武士牧師)会堂前で礼拝が執り行われた。「この場所での最後の礼拝となるだろう」と教会員は言う。豊世牧師夫妻は、肉体的にも精神的にも消耗しているという。「教会役員で手分けしてできることをしている」と話した。

熊本・大分 震災1か月 息長い“心”の関わりを

広域で災害が起きた熊本・大分地震から1か月となる。記者は連休にさしかかった4月28、29日に熊本県を訪問した。キリスト教関係の支援センターでは、各地から続々と支援者が訪れ、約2週間の継続した働きの中で地域との関係もできつつあった。連休後の継続した支援の必要とともに、物資だけではない心の支援が求められていた。(8面に関連記事)【高橋良知】

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九州キリスト災害支援センターの熊本の拠点となっているトータル・熊本ハーベストチャーチ(中村陽志牧師)は、熊本駅から南へ徒歩約15分。
会堂前には、トラックやワゴンが止まり、物資を下ろしていた。元々書店だったという会堂1階の高い天井を見渡せば、亀裂が見つかる。電話やノートパソコンと、たくさんのメモが貼られた事務ブース。長期滞在する看護師を中心とした看護ブースがあった。壁際から床のあちこちまで支援物資が山のように積み重なっていた。その隙間に、大勢のボランティアらが座って、当日の活動を振り返り、明日の予定を確認していた。「益城町の教会では、連日来客が多く、牧師らが対応で疲弊している」「写真撮影も配慮がいる」。看護チームからは「『胸が苦しい』という症状がある人が訪ねてアドバイスした」などの報告があった。

各リーダーたちは別室で続けて会議。中長期で支援に来ている日本国際飢餓対策機構(JIFH)や横浜市のJECA・本郷台キリスト教会のメンバーらが夜中まで支援先への人員振り分け、電話連絡、報告、などの作業をしていた。夜、支援者らは物資の段ボールの狭間に寝袋を敷くなどをして寝た。2階でも、談話室、牧師室含め、各部屋を宿泊に開放していた。

 

打ち解けた関係が生まれている

ゴールデンウィーク初日の29日。朝のミーティング前から続々と各地の支援団体がセンターに訪れた。九州、沖縄、関西、名古屋、関東、東北、ハワイをはじめとした米国、シンガポールなど。JIFH、ワールド・ビジョン・ジャパン、クラッシュジャパンなど災害支援団体がコーディネートをしていた。

ミーティングでは、クラッシュ・ジャパンの山尾研一さん(単立・町田聖書キリスト教会牧師)が、詩篇23篇からメッセージした。妻が熊本出身。震災で全壊した熊本東聖書キリスト教会の豊世牧師家族と親交があったことを明かし、震災後の経緯を語った。

「これから物質的な生活は回復するだろう。だが被災した人々は心の中で多くの痛みを負っている。そこに神の愛をもっていきたい。今日どんな出会いがあるだろうか。祈る心で接していきたい」と勧めた。
全体の注意点の中では、コーディネーターが「言葉で伝道する行為は控えてほしい。今日までの働きで築いた近隣の人々との関係が崩れてしまう。行動、笑顔で愛を表してほしい。自然に心開いて人々の手伝いをしてほしい」とアドバイス。笑顔の練習もした。

最後に、中村牧師が祈ったのち、参加者で初めて会う支援者同士でハグし合い、各自支援先への準備を始めた。看護師不足の病院への看護師派遣、近隣や関係のある人の家屋の整備、清掃、益城町や阿蘇市の活動支援。支援や要望を聞き取るためにはチラシや依頼書を持参した。
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熊本ハーベストチャーチ近くにある1つの家は、ブロック塀が崩れかかっており、塀の撤去清掃に支援チームが出動した。家主は民生委員などを務め、地域支援のために日中は自宅にいない。若い息子がいるが、震災支援の際に骨折し、重労働ができなかった。今回JIFHとして支援をコーディネートする向頭要一さん(キングダムビジネス代表取締役)は「2週間がたち、2回、3回回る中で、初め遠慮していた人たちも課題に気づいたり、心が開くなどして、支援を求めるようになった。『キリスト教会の人たち』として近隣に知られるようになっている」と話した。向頭さんは新潟中越地震からの災害支援の経験がある。

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向頭さんらとともに、自動車で震災の被害が激しかった益城町に向かった。バイブル・プロテスタント・熊本東聖書キリスト教会会堂がある木山一帯は最も被害の激しい地域だった。起伏のある地形で、ことごとく家屋が倒壊。会堂そばに牧師夫人のやすこさんが居合わせていたが、言葉少なげだった。

同町内にある単立・木山キリスト教会は建物の損傷はあまりなく、物資の置き場やボランティアの拠点となっていた。キリスト者学生会(KGK)九州地区の学生や松尾献主事が支援に訪れていた。教会学校が休止中だったため、教会の子どもたちのためにゲームなどのプログラムを実施。この日、初めて教会に訪れたという近隣の子どもも集った。

同教会を拠点にした別の支援チームは、近隣の住宅に必要を聞きに回った。1人の牧師は、「ある家では、初日の地震の夜に早速金庫泥棒にあったそうだ。初めは警戒をしていたが、身近な話題や共通の課題に触れていく中で、震災後の苦労を分かち合ってくれた。最後には涙ながらにハグをした。誰かと『話し合うとすごく癒やされる』と話していた。近隣には一人暮らしの高齢者もいるなど、心配している姿もあった」と報告した。「木山キリスト教会だと名乗って近隣を回ることで、地域の人々も知人がいるところだと安心する。見回ることで、ある所では水が出る、出ないなどの実情にも気づいた」とも話した。(8面につづく

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熊本地震から5年を迎えるこの週、クリスチャン新聞オンラインでは、地震発生当時の初期約1か月の報道を振り返ります
記事のリストはこちら → シリーズ「熊本地震から5年」を掲載 https://xn--pckuay0l6a7c1910dfvzb.com/?p=31229
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