「靖国国家護持」問題と今 西川重則さん(平和遺族会代表)

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 戦没者など「国家のために殉じた」人々を祀る靖国神社を国家運営にしようとする「靖国神社国家護持運動」は、1950年代から日本遺族会、神社本庁などを背景に推進されてきた。本紙創刊の67年時点にはキリスト教会においても法案への反対運動が広がっており、逐一動向や各論点を報道してきた。74年の衆議院での靖国神社国営化法案強行採決を経て、参議院審議未了廃案にいたるまで、年々その報道量は増していった。

 自身戦病死した兄を靖国神社に祀られた遺族でもある西川重則さん(平和遺族会代表、「政教分離の会」事務局長)は、当時日本キリスト改革派教会での靖国問題の取り組みの先頭に立ち、各地で講演活動をしていた。本紙には「西川レポート」として、靖国問題の動向を随時知らせていた。
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写真=1969年3月16日号。右顔写真が西川さん
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写真=1973年12月16日号

 「靖国神社国家護持運動は、本気で実行されようとしていた。反対側としても、学習とともに運動もしていかなくてはいけないという切迫した状況だった」と振り返る。「偶像崇拝など、聖書の御言葉に基づいて考えるならば、教会は無視できない問題でした」

 その後、問題は、首相閣僚の靖国神社公式参拝へと移る。各地で関連した訴訟が起きた。89年に昭和天皇が亡くなると大喪の礼、続いて新天皇即位の大嘗祭について政教分離の観点などで議論が紛糾した。戦後50年の95年は戦争責任問題が紙面を占めた。

 靖国神社周辺を巡るガイドツアーも好評で毎年続けている。本紙でも95年8月13日号でイラストつきでゆかりの場所を紹介する紙面を作成した。「ただ批判するだけでなく、1つひとつ何が問題かを正確に知っていることが大事。靖国神社の職員も学びに来たときもありました」

 安保法制や共謀罪なども含む、近年の「有事法制」にも注意を向ける。「戦前の反省から『戦争は国会から始まる』と注視している。戦争が起これば戦死者が起き、戦没者を祀る靖国神社が問題となります」。99年からは国会傍聴を会期中継続している。「重要な審議に首相が外遊で参加しなかったり、防衛大臣の発言、徹夜での審議・強行採決など、今の国会の状況のひどさは言葉で言い表せない」と危機感を強める。

 講演で配る資料には大量の新聞、雑誌の切り抜きが挟まれている。「私たちは日常の中で信仰を考えていかないといけない。神学者のカール・バルトは、新聞を熱心に読み、神学を形成することを勧めています」

 「若い世代が靖国問題、憲法問題を分からないのは、体験がないのだからやむを得ない部分はある。だからこそ、若い人に分かりやすく伝え、動向の危険性を直感する能力を養ってほしい」と次世代にも目を向ける。

 聖書をよく読むこと、憲法に習熟することを勧めている。「国民主権、個の尊重、戦争放棄、思想信条の自由、公務員の憲法遵守義務など理解を深めたい。安倍晋三首相から改憲を言い始めたのではない。自民党は設立以来、党是として憲法の自主的改正を掲げている。ところが首相をはじめ憲法を理解していない発言が閣僚からあり、問題だ」と言う。「『戦争が始まると最初に犠牲にされるのは真実』という教訓がある。『不断の警告こそは自由の代償』とも言う。自由のためには警告をし続けていきます」(8月13日号「8・15特集」に続きます)【高橋良知

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クリスチャン新聞は、1967年5月にそれまで月刊で発行されていた『福音ジャーナル』を母体に創刊し、日曜礼拝を中心とするクリスチャンの生活サイクルに合わせ、同年11月からは週刊で発行してきました。

50周年を迎えた2017年には、4回の特集、2回の記念集会を実施しました。改めてこの50余年の報道の歴史を通して、戦後の諸教会の宣教の一端をご覧いただければ幸いです。

※毎週火曜、土曜に本オンラインで掲載します

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