5月9日号紙面:世界迫害状況2021 コロナ禍が事態を深刻化 オープン・ドアーズ報告
コロナ禍が事態を深刻化 世界迫害状況2021 オープン・ドアーズ
国際的な宣教団体「オープン・ドアーズ」が、世界のキリスト教徒への迫害状況を調査した報告書「ワールド・ウォッチ・リスト2021」(※)が公表された。例年続く厳しい状況に加え、1年以上にわたるコロナ感染拡大が事態をさらに深刻化させている。公表された分析と迫害の全体的な傾向を抜粋して掲載する。
傾向1 コロナが迫害の実態を露わに
コロナウイルスのパンデミックは、世界中の迫害の醜さを見せつけた。インドでは、10万人以上のクリスチャンが、オープン・ドアーズから救援物資を受け取ったが、彼らのうちの80%は公的な食料配給を受け取っていなかった。ある者は、何マイルも歩いて、自らがクリスチャンであることを隠して、他の場所で食料を手に入れた。15%の人たちは、食料援助を受けたものの、雇止めなど差別を受けている。
インドに限らず、ミャンマー、ネパール、ベトナム、バングラデシュ、パキスタン、中央アジア、マレーシア、北アフリカ、イエメン、スーダンでは、農村地域のクリスチャンが援助を拒否されている。このような差別は政府の役人によって行われることもあるが、多くの場合、村長や委員会のリーダー、地元の指導者からのものである。
ナイジェリアの南部カドゥナでは、クリスチャンの家族は、イスラム教徒の家族に割り当てられた配給の6分の1しか受け取れなかった。ギニアでは教会の閉鎖が相次ぎ、そのため地元の土着の宗教を信じる者たちが教会の牧師をばかにしているという。
傾向2 迫害下の教会の脆弱性が露わに
パンデミックは、キリスト教徒に対する迫害を露呈したが、それはまた、彼らの生活環境、実態がどれほど脆弱であるかも示している。家族や社会が信じる宗教を放棄することは、その家族、社会からのすべての支援を失うリスクがある。 コロナが原因で収入を失っても、通常のネットワークに頼ることはできない。
教会の指導者の多くは決まった給与が支払われているわけではなく、財政的には教会の献金に依存している。「礼拝が停止すると、献金は約40%減少する」とエジプトからラテンアメリカに至るまでの指導者たちは言う。教会内外を問わず、教会が行っている人道支援にも影響を及ぼす。
ステイホームのため、キリスト教信仰に敵対的な家族と一緒に終日過ごすことにもなった。仕事、教育、その他の外部との接触は、日常的な迫害の中にあって、短くても安らげる時間を提供してきたが、それも利用できなくなった。
また、パンデミック以降、女性と少女に対する誘拐、強制改宗、強制結婚が増加したという報告もある。さらに、パンデミックにより、警察官が町から減ったため、麻薬ギャングに対して脆弱な中南米の地域は、キリスト教徒にとってさらに危険になっている。
デジタル監視強化、暴力横行
(この後、「監視が信教の自由を危険に」「信仰が市民の権利を規定する」「外出禁止でも暴力急増も」の三つの傾向について報告します。2021年5月9日号掲載記事)