牧師の妻のSOS 『情緒的に健康な女性をめざして 自分の人生を生きるためにやめるべき8つのこと』評・豊田かな
「やめる!もう教会やめるわ。もう他の教会に行く。」
牧師の妻である筆者ジェリが夫ピートに言い放った言葉です。教会は成長し素晴らしいことが起こっていたのにもかかわらず、別居を提案する妻からの決定的な言葉に彼の動揺と怒りが目に浮かぶようです。
「いつの間にか夫と私は情緒的な結合双生児のようになっていました。」(29頁)お互いが依存的になっているので境界線が完全に失われていました。感情がぶつかり合っていました。彼女の心に人から高く評価されたい思いが深く根ざしていましたが気づく事ができませんでした。
ご夫妻が過去の出来事を赤裸々に分かち合ってくださったことと、夫の過ちについて妻が書くことを容認している牧師ピートの寛容さに驚きます。しかし正直な自己開示によって読者も依存を深める思考パターンがあることに気づいていけると思います。
私たちは霊的習慣(祈り黙想など)に熱心に取り組みますが思考パターンが変わらないと人は変わらないと筆者は述べています。ところが長年の習慣は皮膚のように身体に同化していてわからなくなっています。筆者の八つの「やめること」がその習慣の発見を可能にしました。
五番目の「人のせいにするのをやめる」は私の感情のパターンを知る助けになりました。私も牧師の妻なので筆者の葛藤に同感できる部分がありました。同時に感情の奥にある恐れから防御的になり人のせいにしていたパターンに気づくことができました。筆者は「自由になるための道具セット」も用意しています。「セルフケアの酸素マスク」は自分が幸せでなければ他の人を愛することはできない。幸せを感じる方法を丁寧に説明し意図的に取り組むことを励ましています。牧師夫婦という特殊な環境に身を置いていなくても限界が来る前に自分が陥りやすい思考パターンに早く気づいていくべきでしょう。
筆者が「やめる旅路」と表現しているように人が変わるのには時間がかかります。しかし、本書が多くのキリスト者の内的変容に大きな助けになると確信しています
(評・豊田かな=ニューライフキリスト教会)
『情緒的に健康な女性をめざして 自分の人生を生きるためにやめるべき8つのこと』
ジェリ・スキャゼロ、いのちのことば社、1,980円税込