祈り、愛し、届ける人格教育  明治学院中学校・東村山高等学校 キリスト教活動主任 曽武川道子さん

写真=放送による礼拝に聞き入る生徒たち

西武線小川駅から歩いて10分。武蔵野の面影を残す野火止用水のほとりに明治学院中学校・東村山高等学校がある。取材日の5月14日夕方、笑顔で友人たちと連れだって歩く中高生たちがいた。当たり前の下校風景のようだが、コロナ禍による3回目のリモート授業をへて、10日に登校再開をしたばかりだった。

昨年は3月を臨時休校とした。その間教職員で準備し、プリントの郵送をしながら、同時にオンライン教育システムGoogle Classroom を使用した「リモートラーニング」を準備し、5月に本格実施した。日々オンラインのアンケート機能で授業の感想や健康状態を聞き取り、生徒の様子を確認した。6月末からは対面授業を再開した。

昨年4月は入学式を実施せず、新入生には分散登校をして短く説明会を開いてフォローした。教師らはあいさつ動画を送るなどして励ました。6月に対面が始まった時に、生徒だけの簡単な入学式を開いた。今年の4月は対面で入学式を開くことができた。

キリスト教活動主任の曽武川道子先生(英語)は「リモート時はライブ配信も考えたが、各家庭の状況が違う。録画した映像をそれぞれの都合の良い時間に見てもらうようにした。少人数の授業などでは会議システムGoogle Meetを利用して双方向授業を展開したところや、クラス面談を行ったクラスもあった」と話す。「生徒によって課題をやれた子、やれなかった子の差が出た。特に中学生は家で一人で勉強するのは難しい。一方で、落ち着いてじっくり勉強できた、という声も聞く。繰り返し動画を見ることができるので、学習内容の理解も深まったという生徒もいます」

合宿、修養会、研修旅行など宿泊をともなう催しは中止、文化祭、体育祭なども保護者には公開せず、短時間にするなど工夫して実施した。今年、秋のいくつかの行事を実施できるかは未定だ。「対面が始まってみると、生徒にとって日々友だちと会えることが大きいと思えた。リモート中は『早く学校に行きたい』という声が多かった」と語った。

写真=校舎の様子

従来、礼拝は毎朝、中学生は講堂、高校生はチャペルで集合して実施していた。奨励はクリスチャンの教職員が日替わりで担当し、司会や聖書朗読は生徒が担った。リモート期間は中高分けずに一本の礼拝動画を作成して配信した。対面再開後は、各教室で放送礼拝とした。「教室だとあまり真剣に聞かなくなるのではと心配もあったが、みな黙ってしっかり聞いている様子です」

礼拝や行事での祈りなどは、各クラスで選出しているキリスト教活動委員が担っている。「今後はクリスマスツリーの飾りつけなど委員どうしの交流の機会を増やしたい。ただコロナ禍と重なってまだ実現できないでいます」

「クラブ活動ではキリスト教研究会はキリスト教に関心ある子たちが集まって話をしたり、文化祭で発表する活動をしている。ハンドベル部は教会で演奏したり、夏には米国に演奏旅行をするなど活発です」
さらに生徒たちの自主活動として「高校生キリスト教懇親会」が2018年から始まった。「キリスト教学校であっても『自分がクリスチャンだと言えない』という子たちがけっこういることが分かり、そんな子たちを後押しして、自由におしゃべりできる場が不定期に始まった。この会をきっかけに教会に行き始めたり、受洗をした子もいます」

キリスト教に基づく人格教育の教育理念のもと、「道徳人・実力人・世界人」の育成を教育目標としている。クリスチャン教員として感じる課題は生徒の心の問題だ。「やっとのことで学校に来ているような家庭環境が複雑な子たちも見かける。スクールカウンセラーと話をする機会を持つ生徒も少なくない。『本当に生きているだけですごいよ』と思うほどの課題を抱える場合もある。一人ひとりの問題は一様ではない。ちょっとした立ち話でも心が軽くなることがある。教員である前にクリスチャンとしてどのように愛し、祈り、届いていけるか。神様が送ってくださり、私たちに託された生徒たちを愛することが、キリスト教人格教育にとって重要だと感じています」【高橋良知】