苦しむ人たちの最前線にイエスが 合同平和礼拝「『沖縄、ちむぐりさぬ日』を覚えて」 沖縄の痛みに寄り添い「平和を造る」働き共に

太平洋戦争末期、沖縄は日本で唯一地上戦の戦場となった。犠牲者は20万人以上、県民の4人に1人が犠牲となったと言われる大激戦地だ。県では日本軍と米英連合軍の戦闘終結の日6月23日を「慰霊の日」として、全県で戦没者を追悼し、平和の大切さを新たにする日と定めている。沖縄バプテスト連盟は20日、平和社会委員会主催の第11回合同平和礼拝「『沖縄、ちむぐりさぬ日』を覚えて」を、中頭郡西原町の那覇バプテスト教会を会場に開いた。講師は辺野古新基地建設の抗議活動を続ける日本基督教団佐敷教会の金井創牧師。沖縄県の新型コロナウイルス感染拡大による緊急事態宣言が延長される中、礼拝はオンラインで開かれ、全世界に平和の祈りが届けられた。【藤原とみこ】

最初に沖縄バプテスト連盟平和社会委員会委員長の石原真牧師が挨拶に立ち、昨年はコロナ禍で対面での集会は中止となったが、金城重明牧師の体験による渡嘉敷島の「強制集団死」をテーマにした朗読劇を動画配信したところ、国内外から大きな反響があったことを振り返った。
「オンラインという形でも沖縄から発信することができるのは、主の憐みです。私たちの住む世界は刻々と変化していきますが、平和をつくり出すことへの思いは変えられることはありません。今、人々のいのちが軽視され、オリンピック開催が進められています。沖縄では米軍による事件、事故は絶えることがなく、沖縄の人のいのちが軽視されてきました。『ちむぐりさぬ』とは、悲しく苦しいという意ですが、あなたが悲しいなら私も悲しいという思いが込められたことばです。今なお残る沖縄の悲しみ苦しみに寄り添いたいという思いを込めたタイトルです。講師の金井先生は辺野古新基地反対運動に携わり、沖縄の痛みに寄り添ってくださっている方です」
金井牧師は東京の富士見町教会、明治学院・学院牧師を経て、15年前に沖縄に着任した。牧会の傍ら、辺野古新基地建設抗議船「不屈」船長、沖縄宗教者9条ネットワーク事務局を務めている。エレミヤ書22章3節から「平和を造る」と題してメッセージした。
金井牧師の出身は北海道岩内町。沖縄に赴任した頃、「あなたはヤマトの人か? 内地から来たのか」と問われるたびに、同じく本州を内地と呼ぶ北海道出身者としてとまどったという。

金井創牧師

「沖縄も北海道も、中央から遠く離れた地の課題を否応なしに担わされてきた所だと思います。沖縄に来て変わったことの一つは、聖書の読み方です。東京にいた頃に読んでいたときとは違う、新たな光に照らされた御言葉が、生活の中に届いてきたのです。御言葉を通してイエス様と出会い直すという経験でした」
その原点にあるのは、かつて金井牧師がボランティアで行った、フィリピンのゴミの山を生活の糧に暮らす貧しい地域での体験だった。カトリックの大聖堂を擁する国だが、そこにあったのはブロックを積み上げたようなみすぼらしい教会。ジーザスクライストと書かれた建物を見ているうちに、「ここにイエス様がおられる。私はここにいる」と言われたように思ったという。
「イエス様は、こういう最も困難な人が生きる最前線におられる。お前はイエス様と会うのに、どこに立つ者なのかと問われたように思いました。そして、沖縄に来て分かったのは、私にとってイエス様と出会う場所は、辺野古であったということです。社会的には新基地反対派の市民などと言われますが、そこで行っていることは、神様が求めておられる『平和を造る』働きへの取り組みです。そこでイエス様と出会わせていただいていると感じています」
「武力や暴力では平和はつくれません。この平和ではない社会に平和を造るには、造り方も平和でなくてはならない。非暴力でなくてはならない。辺野古で取り組んでいるのは、そういう意味での平和を造る働きなのです。辺野古で私たちの目の前にいる警備会社や海上保安庁の人たちは、敵ではありません。この人たちと共に平和を造る。そんな思いで向き合い、言葉をかけてきました。10年以上たって、今は笑顔で話せる関係になった人たちがいます。それが平和を造ることではないか。目の前にいるこの人と平和を造れることが、神様に喜ばれることなのだと思います」
「一人ひとりが勇気を持って課題に立ち向かうとき、イエス様は必ず課題の場に先回りして、そこにいてくださいます。そこで私たちは、イエス様と新たに出会い直すことができるのです。苦しんでいる人の傍らで共に苦しみ、共に立ち上がろうとするとき、それも神様の求めておられる平和を造る働きです。それぞれの場で平和を造る者でありたい。その祝福を持ち寄り、分かち合う場として、神様は教会を与えてくださっているのです。どうか、私たち一人一人、平和を造る働きに取り組んでいきましょう」
平和の祈りの交読があり、最後に沖縄バプテスト連盟理事長の渡眞利彦文牧師が「真の平和を造り出す者となれるように」と、祈りを捧げた。