新型コロナワクチン接種から 取り残される難民たち 世界難民の日に先駆けワールド・ビジョン報告

紛争が続く中央アフリカから逃れてきた少女(手前)とその家族。コンゴ民主共和国で(写真提供=WVJ)

世界の子どもを支援する国際NGOワールド・ビジョン(WV)は、6月20日の世界難民の日に先駆け、報告書「High Risk-Low Priority」を発表。それによると、難民や国内避難民は、新型コロナウイルス感染症に感染するリスクが高い環境での生活を強いられているにもかかわらず、ワクチン接種の優先順位が最も低いことが分かった。

ワクチン接種千914人中1人 「最も影響受けている人々 が最も遠いところに」

ワールド・ビジョン(WV)の報告書「High Risk-Low Priority」は、国民を新型コロナから守るのに必要な資源のない低所得国で新型コロナが急増していると警告。これら多くの国々は、世界のワクチン接種量のわずか3%しか利用できない状況にあり、強制的な避難を迫られた4千万人を超える難民も受け入れていて、その結果受け入れ国が実施できるワクチン接種計画は非常に限定的なものになっているという。
アンドリュー・モーリーWV総裁は「新型コロナにより最も影響を受けている人々が、ワクチン接種から最も遠いところに置かれていることに、道義的な憤りを感じる」とし、「高所得国は低所得国の25倍の速さで国民にワクチンを届けており、自国の最も弱い立場にある人々を保護している。WVは、世界で最もぜい弱な立場にある人々にも、同じような保護を今こそ確保しなければならないと訴える」と語る。
「すでに難民や避難民であるぜい弱な子どもたちの多くは、ロックダウンにより教育という貴重な機会を逸している。今、虐待する大人と一緒に暮らしているかもしれない。生計手段が絶たれ、親や保護者が窮地に陥っているため、子どもたちは強制的に仕事をさせられたり、結婚させられたりしている」とも話す。

政情不安で食料不足が深刻なベネズエラから逃れる人々(写真提供=WVJ)

WVは、ブラジル、コロンビア、コンゴ民主共和国、ヨルダン、ペルー、トルコ、ウガンダ、ベネズエラでの調査の結果、調査対象千914人中、ワクチン接種をしたことがあるのは1人のみで、68%が地域でワクチン接種の計画を聞いたことがないと回答。ほぼ半数(47%)が自分には接種の資格がないと考えているか、資格があることを知らなかったという。
調査対象者たちはパンデミック以降、外国人に対する嫌悪やヘイトスピーチ、身体的・感情的な攻撃を受けてきており、72%が「収入が減った」、40%が「仕事を失った」、77%が「食料の必要を満たせない」と答えた。
6月11~13日に開催されたG7サミットでは、各国首脳が途上国に10億回分のワクチンを提供すると約束したが、WVはこの約束を確実に実現させ、ワクチンへの公平なアクセスを優先事項として取り組むよう各国政府に求める。難民受け入れ国政府に対しては、法的・書類上の地位に関わらず、すべての難民・避難民を自国民と同等にワクチン接種を計画、展開し、社会的保護を確保するよう要請する。
190か国以上が参加のCOVAX(ワクチンを平等に分配するための国際的な取り組み)では、最もぜい弱でリスクの高い人のうち、少なくとも20%に対し、2021年末までに20億回分のワクチン接種を行うと約束しているが、資金不足とスケジュール遅延の両方の問題を抱えていると指摘。「世界の子どもたちは世界のリーダーが行動するのを期待している。私たちの調査は危機が及ぶ真の範囲を示している。このパンデミックは、世界の隅々に至るまで解決されない限り、終わらない」と報告書は訴えている。
本件に対する問い合わせはTel03・5344・5351、特定非営利活動法人ワールド・ビジョン・ジャパン(WVJ)まで。