『聖書に聴く「人生の苦難と希望」』(船本弘毅著、教文館、千980円税込、四六判)は2018年に逝去した著者の講演集。前半は旧約の預言書を中心に、後半は新約の福音書、ローマ書などを扱う。各書巻の構成、聖書の全体像を意識しながら、豊かな人生の知見を交えて解説していく。初回が熊本地震の直後であり、排外主義など世界の混迷と、聖書の時代を取り巻く状況とを重ねる。闘病を通して確信を強めた復活の希望をまっすぐ語り、「祈り、祈られる」教会での歩みを感謝する。

イグナチオ・デ・ロヨラはイエズス会の創設者であり、霊性修行を体系化した著作『霊操』でも知られる。『ロヨラの聖イグナチオ自叙伝』(アントニオ・エバンヘリスタ訳、李聖一編集、770円税込、ドン・ボスコ社、新書判)は豊富な注釈で『霊操』の成立過程、対応関係が分かる。騎士道精神に憧れ血気盛んだったが、大病で回心。だが苦行や巡礼に奔走するなど力任せの歩みは変わらない。序文を寄せた日本のイエズス会代表は「『聖イグナチオ』と呼ばれるが、自身は自分のことを『巡礼者』と呼んでいた」と言う。行き詰ったり、道を誤ったりしながらもひたむきに神を求める一人の信仰者の姿が表れている。日本宣教直前のヨーロッパの状況もうかがえる。


コロナ禍にあって教会に集まること、教会の共同体の意義が問われる。『私は、やります!-喜びに満ちた教会のメンバーとなるために』(トム・S・レイナー著、赤松樹美子訳、地引網出版、千320円税込、B6判変)は教会員の立場で奉仕の心を問い直す。自分たちの好みを主張し合う利己的な集まりは結局神を見失い、活力が低下する。利他的で、グループを重視した教会の在り方を勧める。一方で教会の表面的な文化(チャーチアニティ)や派閥の問題など注意点も挙げる。


『LAOS 神の民 「神の民」としての教会』(北尾一郎著、ヨベル、880円税込、A5判)は教職と信徒という分類以前の、より広い「神の民」(ラオス・セウー)という概念に注目する。ルーテル教会の伝統や文脈の中で、宣教の任務を星型の図で整理。信徒と牧師の協働、成人教育、家の教会などの在り方を提案する。

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