「十弦の琴に合わせて ほめ歌を歌え」(詩33・2b)。このみことばを彷彿(ほうふつ)とさせる書である。十本の弦よろしく、十の扉(鍵語)で聖書全巻の物語に各々分け入り、解説をして、十弦の音色により主へのほめ歌を奏でるのだ。しかも、各扉から中に入ると、すべてが起承転結の四部構成となっており、事の発端、イスラエル史、イエス・キリスト、そして結末/終末という統一体で仕組まれている。よくぞ考案したものだ、とその手法に舌を巻く。

牧師/信徒を問わず、キリスト者であるなら誰しも、「聖書には何が書いてあるのか」と自らに問いかけ、他者から問われて困惑した経験を持つはず。天地創造から新天新地に至る神の物語、それは解るが、壮大かつ深すぎて中心思想や歴史物語の変遷をうまく説明出来ないのだ。著者はそれを十通りの切り口/扉で解説する。

ならば十の扉とは何か。著者がセレクトしたのは、創造、祝福、贖い、律法、臨在、戦い、相続、祭司、さばき、平和の十項目。最初と最後はまだしも、間の八項は別のバリエーションがあるかも、と考えてみた。自分なら「神殿」を入れるな、と思ったら「臨在」がそれに相当。「契約」がないのは、「祝福」でアブラハム契約の重要性が示され、通奏低音として響き続けるからだ。

かつて評者も項目解説を担当した『聖書神学事典』(いのちのことば社、二〇一〇年)は、原語解説に始まり、旧約新約の各書でそれがどう用いられているか、時系列の神学的流れを各項目で扱う。さしずめ本書は、ミニ版聖書神学事典とでも言えようか。そんな近寄りがたい面構えより、このタイトルと薄さがいい。ただし、「どうせ初心者向けのスカスカ本だろう」と侮るなら、読み手の無知を思い知らされることになるから要注意。第二扉の「祝福」と第六扉の「戦い」に、とりわけ心動かされた。

神・人・被造物とのシャロームを目指して地上を旅する諸氏には必携のガイド本だ。
評・関野祐二=聖契神学校校長

聖書が解る10の扉 流れをとらえ、自分で読み通すために
原 雅幸著 いのちのことば社、
1,210円税込、B6判

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