アジアには世界の人口の6割が集中し、経済成長、教会成長も急速だ。一方で文化、社会、人種などの課題もある。だがこれらへの考察は世界宣教への貢献につながると期待される。アジアの教会の協力、神学的考察、未来への展望を幅広く議論する宣教会議「アジア2021」が10月11~14日にオンラインで開催された。「アジアの教会におけるメガトレンド(大きな潮流)」というテーマに全体で千300人以上、日本からは60人以上が参加した(次号以降で続報)。【高橋良知】

Zoomを立ち上げると、コメント欄に英語や中国語で挨拶の言葉が飛び交った。集会は期間中毎晩聖書講解、発題、小グループでのディスカッション、各国が担当する賛美があった。各日「アジアの教会における一致」、「2021年におけるアジア教会の現状」、「アジアの次世代への働きかけ」、「教会の重心のシフト:欧米から多数派地域へ」のテーマで多様な講師が立った。

当初2020年にタイで「アジア2020」が予定されていたがコロナ禍で延期となり、オンラインの代替イベントが開かれた。今年も実会場で開催はできずオンラインでの集会開催となった。「アジア2021/22」として、22年10月17~22日にも集会を開く予定。

大会の目的は「アジアというユニークな文脈から、教会と宣教の運動が出現するのを見ること」だ。世界宣教のネットワークであるアジアローザンヌ委員会、教会や団体のネットワークとしてのアジア福音同盟、神学教育のネットワークであるアジア神学協議会の三者が共催し、国際宣教団体アジアンアクセスや世界華福中心も後援した。

23年には福音派のクリスチャンが増加しているアフリカ、アジア、ラテンアメリカ、中東・北アフリカ地域によって「多数派地域クリスチャンリーダー会議」(MWCLC)が開催予定だ。「アジア2021/22」はMWCLCに向けた地域会議でもある。

MWCLCでは、キリスト教の重心が欧米からこれらの地域に移っていることを踏まえ、それぞれの文化的、歴史的文脈の中で明確なキリスト教のアイデンティティーを育て、それによって教会を構築し、それぞれの地域でキリストの使命を進める支援をする。そして欧米の教会との成熟した協力関係構築をめざす。24年にはローザンヌ世界宣教会議が予定されており、そこへも霊的、宣教的な見識を提供する。

 

最大の妨げは「一致」の欠如

「アジアの教会における一致」をテーマにした初日は、同会議実行委員長のデイビッド・ロー氏(ローザンヌ運動東アジア地域ディレクター)が「コロナ禍は大きな課題だが、最大の課題ではない。世界ではクリスチャンの迫害、世俗化、政治的な課題など様々ある。しかしどんな問題があっても神様の絶対的な主権がある」と励ました。

聖書講解ではパトリック・フン氏(OMFインターナショナル総裁)がヨシュア記1章から神の共同体に焦点を当てて、①神のタイミング、②神の民、③神のしもべ、の三つのポイントで語った。①については「現在は複雑な時代だが、私たちのタイムテーブルではなく、神のタイムテーブルで神と共に歩みたい」と語った。

②については「一つの民として助け合いたい。豊かな国や、資源や人材に恵まれた教会から来た人も、小さな国や様々な不足のある教会から来た人もいるかもしれない。私たちは唯一の神、一つの目的、一つの信仰を持つ一つの民。自分は何をほかの人に提供できるか考えたい」と述べた。

③については「『強くあれ、雄々しくあれ』とヨシュアは民を励まし、民もヨシュアを励ました。若い人にも年配者も神が謙遜の精神を与えるように願う」と勧めた。


続いて世界福音同盟(WEA)前総主事のエフライム・テンデロ氏(WEA国際大使)が「汎アジアと世界的教会における一致と働き」について発題。まず経済成長、教会成長や多様な宗教などアジアの文脈をとらえた。

三位一体の神という一致の土台を確認しつつ、膨大な人口のアジアでの福音の必要を述べた。「一人で宣教を成し遂げるには大きすぎる。協力ができないならば、ゾウを巡って二匹のアリが争うようなものだ」と表現した。

「教会はキリストのからだであり、各部分は独立しているが、互いにつながっている。一致は神が与えるが、人間関係の中で実現する。どのように一致を保てるか」と問いかけて、一致のためのガイドラインを紹介した。

一つ目は「合意に集中すること」。「礼拝のスタイルや洗礼の方法など、異なる点に目が行くが、本質的なことでは一致し、非本質的なことでは自由であることが重要。神の三位一体や復活についての本質的な部分では一致しなくてはいけないが、組織、政治的選択、終末論など異なる見解は互いに尊重する必要がある」

二つ目は「共に働くことを約束する」。ネパールやフィリピン、シンガポールなどで人材や資源を共有して働いた超教派の取り組みを紹介した。

三つ目は「コミュニケーションの確立」。フィリピンで様々な学生伝道団体のリーダーを集め、重複を避けて、それぞれの得意分野を生かして協力を強化した経験を話した。

四つ目は各国の全国的な福音同盟の強化。「各国の福音同盟は、一国のアイデンティティーを高めるだけではなく、政府に対しても発言力をもてる。

福音派が人口の1パーセントのコソボで、17年に宗教少数派の権利を狭める法案が出されたため、同国の福音同盟代表とともに、大統領、議会議長に面会し、少数派の権利の保障を求めた」と紹介。また「教会のカルト的傾向のチェック、正義や人道的な問題への権利擁護や政府との連携にも有効だ」と述べた。メガチャーチに向けては「すべての活動を自給自足できるかもしれないが、小さな教会に配慮してほしい。新来会者が他の教会出身者かどうか調べてほしい」と注意を促した。

最後に「自分よりも他の人が優れていると考えることが大事」と勧めた。
「世界宣教を妨げる最大の原因は、外部の圧力や迫害ではない。キリストのからだに一致が欠けることだ。リーダーどうしが関係を築くことが大事。理解されることを求めるよりも理解しようと手を差し伸べてほしい。うわさで人を判断せず、信頼に基づいた関係を築いてほしい。キリストが私たちを愛したように人を愛したい」と勧めた。

政府からの圧迫を受けている地域からも宣教の課題が語られた。

クリスチャン新聞web版掲載記事)