若者と向き合い続ける田中満矢さん いのちの電話とのつながりも生かし
若者と向き合った集大成『いいんだよ、昨日までのこと全部。』刊行 〝本物の愛”は闇でも輝く ナイトdeライトの音楽、自殺予防活動とも連携
田中さんと新刊書籍
「死を考える人に直接届けたい」。教会で若者たちの居場所づくりをするほか、音楽活動、SNSなどで希望のメッセージを発信し続ける田中満矢さん(バプ連盟・札幌新生キリスト教会ユースパスター)は、その12年の集大成を『いいんだよ、昨日までのこと全部。心が軽くなる31のアンサー』(いのちのことば社)にまとめた。「僕が届けられる人は限られる。赤信号の人に届けるためには、青信号の人たちといっしょにやる必要がある。それぞれの人の周りには、その人にしか声を掛けられない人がいると思うのです」
SNSでも多く発信している田中さんだが、本にした理由について「パッケージされてまとまったものを届けることができる。そして手にした時の重みから、作った人、届けた人のぬくもりを感じてほしい」と話した。
本の内容は日常的な言葉で書かれたショートメッセージ集。人間関係、生きる意味など各テーマがあり、関連した楽曲をQRコードのリンクで聴くことができる。曲は田中さんが所属する北海道の4人組バンド「ナイトdeライト」の曲だ。
本を買うことが少ない若者に届けるために、全国の学校に届けようと、インターネット集金システムのクラウドファンディングを利用して出資者を募り、全国200の学校に寄付した。
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「10代にとって、一人嫌な大人がいれば、すべての大人が嫌になる。だからこそ一人の、真剣に向き合ってくれる人との出会いが大事です」
12年前、米国での学びを終えた田中さんは教会を開放して若者たちが自由に過ごせる場所をつくった。ナイトdeライトの活動も本格化し、地元北海道プロサッカーチームの公式応援ソングに起用されるなど注目され、教会にも中学生たちがバンド単位で出入りするようになった。
親に愛されていない、面倒をみてもらえない…。子どもたちの背後に様々な課題が見えてきた。「反抗や暴言、無礼なことも多い。でもその子の行動や価値観が受け入れられなくても、『受け止めること』はできる。学校と家庭の中間に、安全にぐちを言える場。そんな場に教会はなれると思います」
かかわりの中で、イエス・キリストを心に受け入れる子もいた。「中高生の変化は速い。『祈りが聞かれた』など、小さな体験の積み重ねを通して、イエス様が今も生きて働いていることを、彼らに分かる方法で示してくださる。これは私の信仰の原動力にもなった。イエス様の愛が必要でない子は一人もいない。そんな彼らにイエス様を伝えられるのはイエス様の愛を知っている僕らしかいません」
若者とかかわるのは楽しいことばかりではない。「100%の愛情を注いでも、必ずしもいい反応が来ない。裏切りや拒否もある。むなしさを覚えることもあった。だからこそ、僕らのために死んでくれたイエス様の愛に気づかされた。見えるところで見返りは無くても『お返しをくれなかった子は、だれよりも天に宝を積ませてくれた子なんですよ』と言うある人の言葉で、自分を拒否する子についても、感謝な出会いだったと思えるようになったんです」
「離れてしまって、目に見えるところにその子がいないのはさみしいが、イエス様はその子のことを見ている。悲観しすぎることはない。後に大人になって、
『寄ってみた』と顔を出してくれたり、『祈ってほしい』と連絡来るときもある。『ただいま』『おかえり』と言い合える教会でありたい。今の子たちは、集団は求めていない。2、3人でいい。方法はいろいろあるが、一人の子にしっかり向き合うことが大事だと思います」
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ナイトdeライトとしては、コロナ禍でライブ活動ができないなど、困難を味わった。そんな中、今年から地元のラジオ、テレビ局でレギュラー番組を持ち、発信するなど活躍の場は広がった。3月には北海道いのちの電話と協力し、自殺予防動画を制作し、YouTubeで配信(youtube.com/watch?v=Otraulz2YV8、QRコード参照)した。この動画のDVDを道内の中学高校をはじめ全国の学校に寄贈した。『いいんだよ、昨日までのこと全部。』もまた、北海道いのちの電話のつながりが生かされ、札幌市教育委員会を通じて札幌市内150の中高に寄贈した。
(そんな田中さんも「燃え尽きを経験した」と言います。2021年10月17日号掲載記事)