新型コロナウイルス感染症パンデミックの影響により、2020年には、強制的に結婚させられる子どもたち(児童婚)の割合が過去25年間で最大となった。多くの地域で19年と比較して2倍となっているという。背景には貧困、飢餓、教育の機会の喪失がある。

世界の子どもを支援する国際NGOワールド・ビジョン(以下WV)が10月11日の国際ガールズ・デーに合わせて発表した、報告書『COVID-19 AND CHILD MARRIAGE(新型コロナウイルス感染症と児童婚)』=写真=で明らかにした。

WVアドボカシー・渉外担当のデイナ・ブズセア氏は「SDGs(国連持続可能な開発目標)のターゲットには2030年までに児童婚を撤廃することが掲げられているが、進展は遅いままだ。パンデミックによって貧困や飢餓が増加し、教育機会が失われ、少女たちは結婚させられるリスクが高まっている。ここでも少女たちが危機の矢面に立たされている。多くの少女が教育の機会を奪われ、結婚を余儀なくされており、中には2倍以上の年齢の男性と結婚しなくてはならない少女もいる」と述べた。

同報告書では飢餓状態にある子どもはそうでない子どもよりも結婚する可能性が60%高いと述べ、危機的レベルの飢餓を経験している子どもの数は19~20年の間に千200万人増加しており、さらに330万人の子どもたちが18歳までに結婚する可能性があるという危惧を示した。

21年4~6月にかけてアジア太平洋地域9か国の子どもとその家族を対象に実施したインタビュー調査では「結婚している」と答えた子どもの82%はパンデミック発生後に結婚していた。

学校の閉鎖が児童婚に与える影響にも焦点を当てており、現在学校に通っていない子どもは、現在学校に通っている子どもよりも結婚する可能性が3・4倍高いことを明らかにした。「新型コロナウイルス感染症の影響で、小学生や中学生の少女500万人が教育を受けられない可能性がある。これらの少女たちは、児童婚の高いリスクにさらされている」と述べる。

「飢餓、貧困、教育へのアクセスなど、児童婚を誘発する根本原因に早急に対処しなければならない」とブズセア氏は訴える。「新型コロナウイルス感染症の経済対策に焦点を当てている各国政府は、パンデミックの余波に苦しむリスクにさらされている、世界で最も弱い立場にある子どもたちの保護にも優先度高く取り組まなくてはならない。貧困と飢餓に苦しむ数百万人もの子どもたちの親が、どの子どもを手元に置き、どの子どもを結婚させるべきかという恐ろしい選択を迫られている。私たちは、児童婚の強制を許すことはできない。世界には、子どもたちが結婚を強いられることなく、すべての人が食事をすることができ、教育を受けられるだけの十分な資源があるはず。私たちは児童婚を防ぐために、今、行動しなくてはならない」と語った。

WVは70か国以上で、地方自治体、宗教指導者、子どもたちと協力して、法律や社会規範を変えるなど、児童婚を防止する取り組みを実施してきた。当事者である少女や少年たちにも仲間の強制結婚を防ぐために報告などの行動を起こすことを推奨している。チャイルド・スポンサーシップを通じた支援プログラムでは、子どもたちの教育機会を確保するとともに、保護者が子どもを育てるための十分な資金や資源を確保するサポートをし、児童婚の根本原因の解決に努めてきた。5月にもアフガニスタン、バングラデシュ、セネガル、ウガンダにおける児童婚のデータをまとめた報告書「Breaking The Chain」を発表している。

支援や問い合わせはワールド・ビジョン・ジャパンへ。TEL03-5334-5356、www.worldvision.jp/

クリスチャン新聞web版掲載記事)