給食伝道、子ども食堂実践 堆朱さん JEA女性委「かたりば」 下心ない愛が福音の素晴らしさ

河川敷での給食伝道のようす。下は堆朱さん

日本福音同盟女性委員会主催第7回「かたりば」が、10月14日にオンラインで開催され、日本長老教会千住キリスト教会の堆朱光良(ついしゅ・みつよし)さんが「支え合って生きる」をテーマに講演した。堆朱さんは同教会牧師の堆朱敏男牧師夫人で元保育士。1996年からスタートした路上生活者や貧困の中にある人々に福音と食糧を届ける給食伝道礼拝に携わっている。2016年から教会で子ども食堂も始めた。

在日韓国人の堆朱さんは「なるべく人から隠れて生きていきたい」と思っていたという。
「そんな私が皆さんに支え合って生きることを伝えられるのは、主が私を救い出してくださった体験があるからです」と、前置きして、次のように問いかけた。

「人を励まし助けることは大変なことでしょうか。人の励ましを必要とし、助けてもらうことは、恥ずかしいことでしょうか。これは私自身への問いでもあります」
毎週水曜日に荒川河川敷の橋の下で行っている給食伝道礼拝は、25年前の台風の日に荒川の橋の下で震えていた路上生活者に、当時の牧師夫妻がスープやおにぎりを届けたことが発端だ。

「イエス様ならどうされるだろう」
牧師夫妻のこの問いが、炊き出しをし、賛美やメッセージを共にする現在の青空礼拝につながった。コロナ感染拡大の時期には、ショートメッセージを添えた弁当や手作りマスクの配布を行った。11月から橋の下の礼拝を再開。参加者は路上生活者や生活保護受給者、インターネットカフェ生活者、DVなどで家を出た人たち80~130人。コロナ以前から生活困難な人たちが、今さらに困窮している姿を目の当たりにする。

「私たちの教会から、もう一つ河川敷に教会が生まれたようなものです。教会に来るような機会がない人のところに、私たちが出て行き、そこに主が教会を始めてくださったのだと思います。ある方はここに来て良かったと言ってくださいました。一人でいると今までの人生のいやなことばかり浮かんでくるが、ここで礼拝しているとそれが消えていくのがわかる。イエス様が自分の人生に来てくださり、人生の正解を見出した、と」

主の恵みをみんなで分かち合っている。むしろ励まされ、支えられているのは教会の方だと、堆朱さんらは感じている。
「給食伝道礼拝が目指しているのは、福音を語り、今日食べていただき、明日の食糧を届け、共に歩み続けることです。コロナ禍で世界中が困難と喪失に包まれているときに、主は最前線で教会を用いようとされているのだと思います」

教会1階で開いている子ども食堂は、コロナ禍の現在、40~50食の弁当販売を行っていて、いつも完売だ。子どもの支援には保護者のサポートは欠かせない。弁当を買いに来る人が、立ち話でそっと悩みを打ち明けていく。現代社会の孤立と個食に、少しでも役立ちたいと始めた働きだ。毎週金曜日に行っている20食の弁当やマスクの無料配布も好評だ。
コロナ下でも働きを継続している教会の姿に、近所の人からの「やっぱり教会さんは本物だ」という声が聞こえる。困難な時こそ、人々は教会に、クリスチャンに関心を向けていると、堆朱さんは感じている。

「愛の実践は、教会に来てもらうことが動機ではありません。その方がどうであっても、愛を示し、善を行うことにあると思います。下心のない無条件の愛こそが、福音の素晴らしさであり、神様の愛そのものであることを、共に置かれた場で分かち合っていきたい。福音によって、私たちは支えられる弱さを認め、支え合える価値のあることを知り、支えることができる力が与えられており、私たちの存在そのものが人を支えることができるのを見出すのです」【藤原とみこ】

クリスチャン新聞web版掲載記事)