「アナキズム」書籍が活況だ。「無政府主義」とも訳される「アナキズム」は、「自分勝手な人たち」であるとか「非道徳的な破壊主義」だと誤解される。むしろ災害後に発現する自発的、草の根的な利他的行動(『災害ユートピア』参照)に見られるような「新しい社会モデル」だ。硬直した組織、政治体制を揺るがすという意味では危険視される面もあった。だが『アナキズムとキリスト教』(ジャック・エリュール著、新教出版社、2千750円税込、四六判)が勧めるのは非暴力的、反国家主義的なものだ。これは「聖書的思考に最も近い」と言う。権威主義的となった「キリスト教」を批判し、旧新約聖書からアナキズムの源泉を明らかにする。政治、科学技術に無批判な態度を改め、政治権力を相対化し、克服するキリストという存在に焦点を当てる。


『天国なんてどこにもないよ それでもキリストと生きる』(関野和寛著、教文館、千650円税込、四六変)で著者はキリスト教会の「虚像」や「気休め」を批判する。だがそれは著者自身の姿でもあった。「得意の偽善パワー」で良い所だけを見せてきた半面、人に傷つけられ、傷つけ、魂がカラカラになりながら日曜日を迎える…。怒りや疑問、弱さをさらけ出した先にイエスと出会う。著者は念願のチャプレンを目ざし、米国に行くが、そこは新型コロナ感染や人種差別抗議運動が吹き荒れる最中だった。コロナ隔離病棟で、死を目前とした患者に向き合い、看取りにも立ち会えない患者家族の「神がいるならば、なぜ」の問いに直面する。

『ひとりで死なせはしない 日本人牧師、アメリカでコロナ患者を看取る』(関野和寛著、日本キリスト教団出版局、千430円税込、四六判)で著者が出会ったのは日本で経験したのとは次元のちがう「不条理」だった。人種、宗教、政治信条も異なるチャプレンチームと多文化の豊かさと葛藤を経験する。日本では、まだまだ理解が浅いチャプレン文化にもチャレンジする。

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