地域にとって教会が持つ意味 連載 石巻の“新しいこと” ~4~
2011年末には石巻の地元の人たちと餅つき大会をした。写真提供=青柳さん
東日本大震災後、千葉県千葉市の長老教会・おゆみ野キリスト教会を中心に共同支援プロジェクト「ヘルプ東北・地震災害支援」が設立され、東京・中央区のグレースシティチャーチ東京は協力して支援を続けた。【高橋良知】
前回まで
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福田真理さん(グレースシティチャーチ東京牧師)は、支援に取り組む姿勢についてこう話す。「究極の助けはイエスの福音だが、支援活動を、福音を語るための手段にしないよう気を付けた。今の必要に寄り添い、支えていこうと思いました」
同教会は東京都心で開拓宣教に取りかかっていた。「街には街が生きてきた歴史がある。活動拠点にした石巻市の渡波(わたのは)エリアに教会はなかった。教会が地域にとってどんな意味があるかという前提が問われる。教会を作ることをゴールにせず、まちの復興、コミュニティーの回復をゴールにしました」
支援者どうしのかかわりでは「少しでも福音を体で表すことを大切にした」と青柳聖真さん(グレース・ハーバーチャーチ牧師)は言う。
東京・中央区佃島の母親たちが支援のネットーワークを立ち上げ、いっしょに炊き出しなどの活動をした。
「少なくともクリスチャンはいいことをする人たちと思ってくれればと思った。あるお母さんは『自分のことばかりではなく、少しでもほかの人のために何かをやる、ということは素晴らしいことだと思う』と言ってくれた。『人をクリスチャンにするため』に支援活動をするのではなく、『自分がクリスチャンだからする』のだということを大切にした。イエス様のあわれみ、愛を伝えたい。イエス様ご自身があなた方と共にいるのだ、ということを伝えるために物資を配るのです」
支援活動で出会った近隣のつながりは今も続いている。そのほか、企業や一般のNGOとも協力した。
福田さんは「都市の教会は地方の犠牲で成り立っていると痛感した。都市の電気も人材も地方によって成り立っている。たくさんの恵みを地方からいただいた。それが分かったからこそ、何かしたいと考えました」
サンクス・ギビングデーの様子。11月
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コンサート、夏祭り、サンクスギビングデーなど様々な催しをしてきたが、本格的に聖書のメッセージを語ることはなかった。だがやがて地元住民の中から歩み寄る人も出てきた。
クリスマス前に地域の一人の人が突然支援センターに訪れた。当時香港から帰国し、支援活動に従事していた小澤倫平さん(渡波キリスト教会代表)は「何か問題が起きたのか」と緊張した。その人はドアを開けるなり、こう言った。
「あなたがた、クリスチャンなんでしょ。どうやったらクリスチャンになれるの」
既存の寺とも違うキリスト教会の働きに目を見張っていた。小澤さんが「私たちは神様に愛されていることを知っているのです。その愛を示したいのです」と導くと、その人は、「自分もそのようになりたい」と答えた。
当時ヘルプ東北のスタッフだった大舘晴明さん(同教会協力宣教師)も、「この人は地域のリーダー的存在の人で、クリスチャンの活動をずっと見ていた。震災後、全国から多くのボランティアが石巻に訪れ、市内の石巻専修大学の敷地は支援団体のテントが所せましと並んだ。しかし10月までには一般のボランティアもどんどん撤退した。一方クリスチャンのボランティアたちはずっと支援を続けていたので、その人は驚いていた」と話す。
福田さんは「伝道のための支援活動ではないとしてきたが、その段階がきた。ここから教会の伝道活動が始まった」と振り返った。クリスマスには、衣装も準備し本格的な降誕劇を披露し、聖書の話を語った。
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教会・教団教派間の協力関係も進んだ。「渡波地域にキリスト教関係で5、6団体あり、情報交換をして協力した。驚いたのは、違う団体が一つの目的のために協力できたこと」と大舘さんは言う。
このような活動の一方、国際SILの働きに従事するウイクリフ聖書翻訳協会宣教師の高田正博さんを中心に、長老教会も石巻クリスチャン・センターの働きにかかわっていった。(つづく)
(クリスチャン新聞web版掲載記事)