オクサーナさん

国際NGОワールド・ビジョン・ジャパン(WVJ)主催のウクライナ支援特別コンサート「平和への希望 歌声とともに」が6月8日、東京・新宿区百人町の淀橋教会の会場とオンライン併用で開かれた。当日はウクライナ出身のオペラ歌手オクサーナ・ステパニュックさんのコンサートと、公益財団法人 日本YMCA同盟の支援を受け、4歳の娘を連れて来日したウクライナ避難民のマリア・ホミャークさんの話を聞いた。【中田 朗】

同コンサートは、戦禍にある故郷ウクライナの支援のため精力的にチャリティーコンサートを行っているオクサーナさんと、ロシアのウクライナ侵攻直後から同国、隣国で支援活動を行うWVJの思いが一致し、緊急企画として実現した。
プログラムは、ピアニストの比留間千里さんによる映画「ひまわり」テーマ曲の情感こもったピアノソロ演奏から始まり、その後オクサーナさんが登場。オクサーナさんは、明るい調べのシューベルト作曲、悲しみと憂いを表現したヴァヴィロフ作の、二種類の「アヴェ・マリア(後者は「カッチーニのアヴェ・マリア)」を歌い上げ、また有名なウクライナ歌曲「マリーゴールド」を「故郷と両親を思い浮かべながら」、心を込めて歌った。

マリアさん

続いて、日本に避難中のマリアさんに話を聞いた。聞き手は、WVJ事務局長の木内真理子さん。
マリアさんはクリミア出身で、キーウで生活していた。2月末、危険を知らせるサイレンが鳴り響く中、娘を連れて列車に飛び乗り、隣国ポーランドに避難した。「次に何が起こるか分からない状況の中、ウクライナ国内を列車で移動するのが、いちばん大変だった」と語る。
避難先のワルシャワで「この先どう生きていけばいいか」と思っていた時に、日本YMCAと出会い日本へ。「日本に着いた時は、とにかく寝たかった。空港からホテルに着いてひと休みしている時、いろんな感情が湧いてきた」
プロカメラマンでもあるマリアさんは、朝6時に撮ったという駅構内が空っぽのキーウ駅、キーウからリビウに避難する列車内で撮った写真を見せた。「車内はとても混み合っていて、恐怖と緊張に満ちていた。この後何が起こるか分からない中で、私も娘も一睡もできずに夜を明かした」
「ウクライナは本当に素晴らしい国で、最も誇らしいのは人々。才能に、知性にあふれた人々がいっぱいいる。これらの人々は国内だけでなく世界のために貢献してきた。この人々を救うことは、祖国を助けるだけでなく、世界のためにも必要だ。一国でなく世界の問題であることを知ってほしい。どうか、ウクライナを救うために皆さんの力を貸してほしい。ウクライナのことを忘れず支え続けてほしい」。そう目を潤ませながら訴えると、会場から拍手が沸いた。
その後、再びオクサーナさんが登場し、今度は日本の歌を披露。日本に来て初めて覚えたいう「浜辺の歌」、日本とウクライナ両国の友情を込めて「見上げてごらん夜の星を」を歌った。最後はオペラ「ノルマ」より「清らかな女神よ」、「ヴェネツィアの謝肉祭」を披露。100年に一人と言われるコロラトゥーラソプラノの透き通るような歌声が、会場全体に響き渡った。
コンサート後、オクサーナさんは記者の質問に答えた。「日本人に伝えたいことは」の質問には、「感謝を伝えたい。2月以降、ずっとウクライナのために応援をいただいている。日本の皆様を心から愛している」、「今日歌った感想について」は、「オペラのアリアを歌ったが、私の歌声を通して神様の魅力を見せたかった。世界の平和を心から願い、祈りを込めて歌った。私は音楽、芸術、言葉の力で、この世界を美しい場所にしたいと願っている。両親と妹は国内に留まっているが、毎日希望を持って生活している。早く平和が訪れてほしい」と答えた。

クリスチャン新聞web版掲載記事)