今どきの韓国異端

●系統別の特徴と注意点●

安倍元首相の銃撃事件以来、にわかに注目された統一協会(現・世界平和統一家庭連合)は、1980年代に合同結婚式や霊感商法で騒がれた後はメディアに登場することが少なくなり、問題があったのは過去のことと勘違いしていた人も多い。しかし「空白の30年」などと言われたこの間も、因縁話で不安にさせて高額の物品を売りつける詐欺商法や法外な献金要求によって家庭が崩壊するような例はなくなってはいない。それどころか類似の異端・カルトが韓国や中国から次々とやって来て、新たな被害相談が増えている。知らないとクリスチャンでも引っかかってしまう新興「異端・カルト」について基礎知識を整理しておこう。

「再臨のメシア系」

統一協会はマインドコントロールして文鮮明(ムン・ソンミョン)を再臨のメシア/キリストと信じさせるが、
同様に教祖を「再臨主」「聖霊」など神格化するタイプの異端が韓国では多い。自称メシアが40〜50人いるとも言われるが、この系統に共通の特徴がある。
イエス・キリストはメシアとしての使命を達成できずに失敗したという考えだ。イエスはメシアとして生涯を全うすれば神の国(地上天国)を完成したはずだったが、迫害を受け十字架で死んだので、使命を果たせないまま挫折した。だから再臨のメシアが来てその使命を達成する。そのメシアはすでに来ている、それが○○先生(教祖)である、という教えだ。教祖が死んでも「○○先生の使命は△△先生に引き継がれた」と言う。
統一協会は、それで文鮮明の妻と二人の息子との間でメシアの正統争いになった。他に新天地イエス教、神様の教会、摂理(キリスト教福音宣教会)、中国発祥の全能神などがこの系統。神様の教会のメシア/神は安商洪(アン・サンホン)だったが、彼の死後は愛人の張吉子(チャン・ギルジャ)が後を継ぎ、聖書の解釈を変えて「女の神様」となった。
予防には、十字架の贖いの完全性を把握しておく必要がある。
教祖を「再臨のメシア」と信じさせるために聖書の時代を旧約→新約→終末(今)に三区分するのが典型的。ダニエル書の「7週」などの数字を利用して恣意的に計算し、再臨主は今来ているとこじつける。そんな話をいきなり聞けば異端だと分かるが、その奥義に到るまでに巧妙に教祖がいかに特別な牧師かを繰り返し吹き込むなどしてマインドコントロールされる。
また、自分たちは神の側(善)、外の世界は悪魔の側(悪)という善悪二元論なので、組織外からの忠告や助言は家族でも「サタンの惑わしだ」と攻撃する。
うそでだましても神のためなら良いことだと思いこませる。信者は神の目的を果たすために崇高な使命感を持って反社会的な行動もするのだ。カルト信者も良心がとがめることはあるが、うそを繰り返すうちにマヒしてしまうという。脱会して「うそをつかなくていいと思うとホッとした」という証言もある。

CGM Volunteer
摂理のテキスト「中心者を通じなければ絶対にひとりもこの地で携挙されることはない」
「30講論」の再臨論。歴史を3区分し「再臨主」の時代を示す

「救援派(クオンパ)」系

「あなたは救われていますか」とクリスチャンをターゲットにするのは救援派(クオンパ)だ。「何年何月何日に救われたか」と突っ込む。明確な自覚がないと「あなたは救われてない」と不安にさせ、「悔い改めを繰り返すのは救われてない証拠だ。私たちの教会に来れば救いの確信が得られる」と誘う。
救われたクリスチャンは悔い改める必要がないと教えるので、日常生活で過ちを犯しても反省も謝罪もしなくなる。2014年に多くの犠牲者を出したセウォル号沈没事故の際、
船長が乗船客を見捨てて真っ先に逃げ出し世間をあ然とさせたが、その船会社はクオンパの系列会社で船長ら乗組員のほとんどが信者だった。悔い改めなき信仰は高慢と反社会的な行動の温床となる。予防には、救い・悔い改めについて聖書から知ることが重要だ。

「鬼神派(キシンパ)」系

悪いことはみな悪霊のせいと考えるグループを、韓国では鬼神派(キシンパ)と呼ぶ。彼らの「伝道」の中心は悪霊と戦い追い出すことだ。それに反比例して自分の罪の認識や悔い改めの求めは薄れる。キリストへの信仰よりも悪霊との戦いに熱中すると福音理解の根本が混乱する。
悪霊について過度に強調するベレヤ運動やタラッパン運動では、牧師がそのセミナーに参加して感化され教会が混乱して分裂するケースが相次いで報告されている。
救援派系や鬼神派系では、教祖を「再臨のメシア」とするような異端と違い、イエス・キリストが救い主であることも教えるので、「異端」と言われることには強く反発する。しかし、聖書は悪霊を実在として扱うもののイエスを主と信じる信仰による救いの意義が相対的に薄れてしまうほどに悪霊の働きを強調していないか、という点は注意を要する。

異端にも異端視にも警戒が必要

キリスト教において「異端」とは、キリスト信仰に必須の信仰内容を欠いているか、あるいはゆがんでいるなど正統信仰から逸脱していることを指す。新約聖書の時代から、聖書に基づく神観とイエス・キリストを主と信じる信仰による救いという基本教理から外れていないかは、教会が立つか倒れるかの要件だった。だがそれは自分たちの伝統や文化と異なる教会を異端視することとは違う。危険な異端の進入に警戒するとともに、健全な教会協力を阻害する「異端視」にも注意が必要だ。
その峻別のために、韓国では主要教団が専門家調査に基づき総会で正式に決議した異端規定(左表)が「教会的」な判断基準となる。

韓国主要教団「異端規定」とは何か

新興異端・カルトが次々日本に入って来ると、判断に迷うことも多い。そんなとき役に立つのが、、、、、、、

2022年10月09日号掲載記事)