【レビュー】「無力さ認めることから前へ」当事者対話 『雨の日も晴れの日も 私の躁うつ病日記』評・向谷地生良
向谷地 チャーミーさん、今日は、ご自身の「双極性障害」に長年向き合ってこられた当事者研究家として、内田道代さんの『雨の日も晴れの日も』を読まれていかがでした?
チャーミー 自己病名「躁(そう)は買い物、鬱は身体のストライキ」のチャーミーです。よろしく~。そうですねぇ。思ったのは、道代さんの躁は神様を感じられて、とても明るいし、素直に「躁になりたい」と言われることが驚きですね! 私はいままで躁を、薬と自分の努力でコントロールすることに必死だったし、その意味では、自分は、「理屈派」で、道代さんは「待つ派」みたいな感じがしたなぁ。特に、道代さんは、旦那さんが苦しむので、しぶしぶ躁を諦めるのに対して、私は人の言うことは聞かないで、物を買ってしまう。私は、そんな自分を恐怖しているところがあって、ひたすら、薬と自分の力でコントロールしようと頑張っている感じかなぁ。
向谷地 お二人に共通しているのは、研究熱心なところ。試行錯誤(実験)を重ねながら、結果に学びながら、次の手を打つプロセスが、苦労だけど素晴らしい。一方で、チャーミーさんは、一生懸命、自分の腕を磨いている感じがするんだけど、道代さんは、そのプロセスを通過して、「委ねる」「任せる」「信じる」の領域にいる感じがして興味深いね。
チャーミー そうですね!「当事者研究」の理念に「前向きな無力さ」があるんだけど、それを思い出しますね。道代さんは躁をコントロールできないから、人に自分のコントロールをお願いしてる感じあるのと、無力だけど、前向きな対処をしてる。これは、無力さを認めるからこそできる対応で、結果として、出来ることも増えてる。道代さんは今、体調も安定しているらしいし、すごい! いいなぁ~。薬の工夫もあるなら聞きたいです!
向谷地 そうだね、教えられるのは、結局は、「双極さん」との付き合いは、「どう生きるか」というテーマと隣り合わせということだね。
チャーミー 私も、そう思います。同時に、経験者同士の交流もこれからは、大事ですね♪
(評・向谷地生良=社会福祉法人 浦河べてるの家理事長)
『雨の日も晴れの日も 私の躁うつ病日記』
漫画・文/内田道代、解説/芳賀真理子、いのちのことば社、フォレストブックス、1980円税込、A5判
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