播義也(アジアン・アクセス・ナショナル・ディレクター)

 

ティモシー・ケラー著『センターチャーチ バランスのとれた福音中心のミニストリー』(いのちのことば社)に関する連載、第二回は「開拓」の視点で播義也氏(アジアン・アクセス・ナショナル・ディレクター)。

 

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新連載 福音広がる『センターチャーチ』① 宣教は深い自己理解と生き方から 2023年02月26日号

 

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昨年秋、西アジアの都市で教会開拓プロジェクトのため一か月間過ごした。本書はその旅のお供として約一か月かけ読ませていただいた。

異文化のコンテクストで読んだこともあり、福音の文脈化、都市のビジョン、またこれから生み出されるべき教会のモデルについて、深く考えさせられた。

全体的な書評は他の方にお願いするとして、私は本書の適用として書かれている、第29章「ムーブメントのダイナミクスとしての教会開拓」を中心に、展開したいと思う。それは、行き詰まりを覚える日本の教会が真剣に受け止めるべきメッセージだと確信するからである。

ケラー氏は以下のような疑問を投げかけている。

 

パウロも教会開拓なしに伝道や弟子訓練をすることは決してなかった。過去何十年もの間、聖書解釈者たちは、使徒の働きにおける宣教活動の基本的な要素として、聖書の教え、伝道、交わり、弟子訓練、礼拝に着目してきた。しかし、私が不思議に思うのは、使徒の働きにはこれらの要素と合わせて教会開拓という要素があるにも関わらず、それが存在しないかのように取り扱われてきたことである(583頁)。

 

日本の教会もケラー氏が指摘するように、教会開拓という要素が存在しないかのように取り扱われて来たことは否めない。私もある牧師から「日本には教会がすでにたくさんある」と言われたことがある。

このような教会開拓についての意見に対して、ケラー氏はこう展開する。

 

使徒の働きの解釈にはよく見られる反論がある。「それは昔の話だ! 今や北米やヨーロッパに教会がある。新しい教会開拓をする必要はない。そのようなことをする前に、むしろ今ある教会を強化すべきだ」。こういった典型的な反論に対する答えを幾つか示したい(590頁)。

 

こうして示された反論で、具体的なデータの裏付けを示しながら述べていることは、「クリスチャン人口を増加させる方法は、既存教会の刷新ではなく、教会開拓に取り組むことである」と言う。

理由として、教会は時間の経過に伴って、内部組織の必要が増し、資源とエネルギーのほとんどを、教会外ではなく、教会内の人々に向けるようになる。したがって「都市でクリスチャンの数を劇的に増加させる唯一の方法は、新しい教会の数を劇的に増加させることなのだ」と言い切る。

また、それぞれの教団教派の理事会や執行部が考えるべき、具体的なルールとして1%ルールを紹介している。

 

毎年、教団教派は、既存教会総数の1%に相当する教会を新しく開拓しなければならない。そうでなければ、その教団教派は維持されるだけで衰退していく(594頁)。

 

この書評は、フィリピンに向かう機内で書いている。フィリピンはローザンヌ会議でのチャレンジを受け、次の年の1975年から2000年までに、すべてのバランガイ(最小行政区)に教会を生み出すビジョンを、フィリピン福音同盟で受け止め、それぞれの教団教派が手分けして、教会開拓に着手し、結果五千教会から五万一千教会に増殖した。さらに現在は十万教会を目指して取り組んでいるとのことでそのビジョンに圧倒される。

日本でも津々浦々に福音に生きた共同体が生み出されていくことを願う。本書はこれからの時代に教会が取り戻す視点と持つべきビジョンを豊かに与えてくれるものとして、心から推薦するものである。(つづく)

2023年03月05日号掲載記事)