ブラジル・リオでジャイロの貧しい地域に住む人たちの家にも訪問し親しく言葉をかける教皇フランシスコ (C) 2022 21Uno Film srl Stemal Entertainment srl

2013年2月28日をもって先代教皇ベネディクト16世が生前退位したのに伴い、アルゼンチン出身のホルヘ・マリオ・ベルゴリオ枢機卿は、3月にバチカンでのコンクラーヴェ(教皇選挙)に臨み、76歳にして266代ローマ教皇フランシスコに選ばれた。日本人には馴染み深いフランシスコ・ザビエルと同じイエズス会司教として積極的な布教活動と庶民層に寄り添う司教として知られていた新教皇。着座13年~22年までの9年間に37回の旅をして53か国を布教行脚し、連帯と尊厳、貧困と難民問題を語り、戦争を避難した。訪問先の国々の貧しい人々が暮らす地域へ赴き、路上でも歩み寄って語りかけ、世界の司牧者としてとりなし祈る姿を追ったドキュメンタリー。

↓ イタリア映祭東京会場(5月3日)で特別上映された際にロージ監督インタビュー ↓
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布教ととりなし
の祈りの旅を追う

監督は、中東・アフリカから危険を顧みずイタリアを目指す難民船の実情を描いた「海は燃えている~イタリア最南端の小さな島~」(17年製作)や、イラク、シリア、クルディスタン、レバノンなどの国境で暮らす人々をルポした「国境の夜想曲」(20年製作)などで知られるドキュメンタリー作家のジャンフランコ・ロージ。ロージ監督は、旅する教皇を記録した500時間に及ぶ資料映像と監督自身が撮影したドキュメンタリー映像を適宜挿入し、二つの視点から教皇のメッセージと人間性を浮き彫りにしていく。

本作の冒頭、イタリア・ランペドゥーサ島を訪れた教皇は、難民380余人を乗せた船が難破した直後で、「私たちの社会が失ったのは泣くという体験です。…無関心のグローバル化が泣くという力を奪ったのです」と胸を痛めて群衆に語りかける。米国の下院議会では、武器売買を止める責務があることを訴える。バチカンでは児童への「性的虐待という犯罪と悪行をこれ以上隠蔽することは赦されない」と毅然とした対処を宣言。チリで発覚した児童への性的虐待事件では、誤解を招いた表現について謝罪を表明する真摯な対応をみせた。

戦争に対する明確なメッセージを公にし、神の前に赦しと制御をを請い、とりなす祈りには、為政者のために祈りなさいという御言葉の重さと実践することの大切さをあらためて想い起こされる。【遠山清一】(本稿は8月15日に再編集)

(C) 2022 21Uno Film srl Stemal Entertainment srl

監督・脚本・撮影:ジャンフランコ・ロージ 2022年/83分/イタリア/イタリア語・スペイン語・英語/ドキュメンタリー/原題:In Viaggio 配給:ビターズ・エンド 2023年10月6日[金]よりBunkamuraル・シネマ 渋谷宮下、新宿武蔵野館ほか全国巡行ロードショー。
公式サイト https://www.bitters.co.jp/tabisuru/
公式Twitter https://twitter.com/Rosimovie_jp