「となり人」になるとはどういうことなのか。昨年9月、この問いかけでスタートした社会福祉法人ミッションからしだね主催の「『となり人』を考える会」の最終回が、4月15日に京都市山科区のからしだね館で、オンライン併用で開かれた。ゲストスピーカーは「君が代」不起立処分撤回裁判を闘う、元大阪府立支援学校教員の奥野泰孝さん。

奥野さんは2015年、支援学校の卒業式で、国歌斉唱のときに起立しなかったということで懲戒処分を受けた。担任だった生徒は車椅子で立てない。一人だけ立てないことで不安になり、てんかん発作を起こすかもしれないと考え、生徒の隣で共に座っていた。支援学校の教員として当たり前の姿であり、障がい者権利条約に定義される障がい者の人権を保障する「合理的配慮」だったが、大阪府は処分の対象とした。

「生徒より君が代を大事にしなさいと言っているのと同じです」

41年間教員をしてきた奥野さんは「学校がどんどんゆがめられている」と感じている。2011年の大阪府と大阪市の国旗国歌条例制定以来、国歌斉唱での起立強制は信教の自由の侵害だとした訴えは2度とも認められなかった。現場の声は聞かれず、上からの通達が現場を支配する。それでも、黙っていたら為政者のやり方を支持することになる、と奥野さんは訴える。

「子どもたちのいる学校から国家統制が始まります」

日本が戦争に突入していった歴史に触れ、兵士にするために子どもを生むことを推奨し、少年たちを戦場に駆り立てていった時代を振り返った。

「裁判をしていて気付いたのは、私が生徒を支援しているのと同じように、私も支えられてきたということです。神様は私を一人にしないと言われる。『最も小さい者たちの一人にしたことは、わたしにしたのです』と言われる。イエス様は私のとなり人になってくださった。私のとなり人の生徒の中に、イエス様はおられたのです」

強制的に君が代を歌わせようとすることは、となり人の関係を破壊することになる、と奥野さんは考える。長い闘いで心が弱ったとき、神は必ずとなり人を与えられた、と感謝が湧く。5月17日の大阪地裁の判決を待つ。

2023年05月07日号 02面掲載記事)

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