本書は長野県南佐久郡における、笑いあり、涙ありの22年間の教会開拓の記録である。しかしそれは単なる記録ではなく「伝道者としての信仰と人格形成……伝道と教会形成の原則」に関しての記録であり、それゆえに強烈に惹(ひ)きつけられるのだ。

著者はまず自らの信仰の遍歴について語ることからはじめる。興味深いのは、都市を中心に効率主義に傾いた教会成長論がまん延する90年代、著者が「日本福音土着化祈祷会」なるものを設立し、日本の地方伝道に関心をもち続けたことである。著者はその意味で地方伝道の選びの器だったのだろう。著者自身が地方での教会開拓に、幼子と病身の母親とともに赴く様は、まさに未伝地に覚悟をもって臨む宣教師のそれである。信州の大自然のなかで一人ひとりに福音を語り続ける著者。神もまた一つ一つ扉を開き、収穫へと導いてくださる様が小気味よいリズムで語られ、夢中でページを繰る。土着する日本の宗教との対峙(たいじ)と工夫。聖書的伝道と教会形成を目指すものなら誰もが感化されるであろう珠玉のエピソードである。

本書が明らかにしたことは、福音とその伝道のあり方の普遍性であろう。因習が深く、少子高齢化の進む信州の山間部で著者がとった伝道方法は、トラクト配布と足を使った個人伝道である。著者は聖書において福音は「足」と結び付けられていると振り返る(ローマ10・15、エペソ6・15)。時代が代わり、次第にトラクト配布や個人伝道が廃れ、SNSや動画をもちいた伝道が主流になりつつある。しかし、福音は「人」を通して、神の羊に語られるように主が定められている。それはとりもなおさず「足」を使って福音を届けることにほかならない。

22年間で数十人の群れが南佐久郡に形成された事の評価はそれぞれに任せよう。しかしその働きの実は「よくやった。よい忠実なしもべだ」という主の称賛が届くにふさわしい実であろう。すべての伝道者に読んでいただきたい記録である。
(評・齋藤 満=同盟基督・グレイスハウス教会牧師)

私は山に向かって目を上げる―信州南佐久における宣教と教会開拓―
水草修治著、地引網出版、1,760円税込、四六判

2023年10月01日号 04面掲載記事)

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