フィンランド福音ルーテル協会 スオミ・キリスト教会宣教師 ヨシムラ・パイヴィ

フィンランドのクリスマスは「光のお祝い」

フィンランドでは、クリスマスは「光のお祝い」とも言われます。どの家でも外にイルミネーションを飾り、集合住宅やオフィスビルの窓辺には7本立てロウソクの飾り(電気の明かりですけど)が置かれ、冬の暗い町は、無数の小さな明かりに囲まれます。目抜き通りでは、デパートもお店も、豪華に飾った「クリスマス・ウインドー」の競い合い。道行く人たちは足を止めて見入ります。


国民の65%が属するルター派の国教会では、毎年全国でアドベントの最初の主日に、毎年同じ福音書の個所が朗読されます。イエス様がロバに乗ってエルサレムに入城するところに来ると、会衆は一斉に賛美歌「ダビデの子、ホサナ」を歌います。これを歌うと、みんな気持ちはアドベント。テレビのニュースでも、「今年もアドベントに入りました。映像は〇〇教会の様子です」などと毎年取り上げられます。

もう一つ、アドベント期間中には「美しいクリスマスの歌kauneimmat joululaulut」がどの教会でも行われます。これは会衆がクリスマスの賛美歌を延々と歌うもので、とても人気があり、会堂がいっぱいになります。歌うことでみな、クリスマスの本当の意味をかみしめるのです。

家庭では、お菓子の準備。フィンランド語で「ピパルカック」と呼ばれるスパイス・クッキーや、パン生地で作る「クランツ・ケーキ」、プルーンジャムの入った星型コーヒーブレッド「ヨウルトルットゥ」はどの家庭でも作られます。特にピパルカックは焼くとシナモンなどスパイスの香りが家中に広がり、「今年もクリスマスが来た」と、季節の到来を感じるのです。

クランツ・ケーキ(手前)とジンジャークッキー

クリスマス料理は種類がとても豊富です。豚肉のオーブン焼き、魚のビネガー漬け、ニンジンやジャガイモのキャセロール、生野菜やゆで野菜のサラダなどなど、みな美味しい上にどれも日持ちがするので、朝昼晩だけでなく「夜にも手が出てしまう」と言われるほどです。どの家にもその家の味があり、伝統的なクリスマス料理は、母親から子どもに大切に受け継がれていくのです。

伝統と言えば、クリスマス最大の伝統行事は、クリスマスイブの正午、ヘルシンキから西へ電車で2時間ほどの町、トゥルクで行われる「クリスマス平和宣言」です。中世から続くこの行事は、もともとは国王の使者が市民に対して、「救い主の誕生をお祝いするから平和を保て。平和を乱す者は厳罰に処す」と命じたものです。その日何千人もの市民が大聖堂近くの広場に集まり、巻物を持った市の儀典長が格調高く「平和宣言」を読み上げます。テレビもラジオも全国に中継放送。これが終わると、店もレストランも閉まって国中が静まり、家庭でのクリスマスのお祝いが始まります。

「このお祝いはどなたのおかげ?」 喜びをみんなで分かち合う

教会のイブ礼拝の後、家では家族みんなが食卓に着き、食前にルカの福音書の2章、世界で最初のクリスマスの箇所を読みます。その朗読が終わってから、待ちに待ったクリスマス料理をいただきます。こうやって、このお祝いがどなたのおかげで出来るのかを心に留める、これが、フィンランドの伝統的なクリスマスなのです。

最後に私が子どもの頃の話を一つ。明日はクリスマスイブ、という日に不思議なことがありました。酪農をしていた私の家は、田舎の森を切り開いたところにあったのですが、その日見知らぬ旅人が突然家にやって来て、「泊めてほしい」と言ったのです。明日は家族が集まってお祝いをしようと、その準備をしている時、しかも見ず知らずの人。心配もありましたし、父も母も困った様子でした。でも外は暗く、雪が積もってとても寒く、追い返すのは可哀そうでしたから、結局泊めてあげることにしました。イブのために準備していたクリスマスの料理も出してあげて、1日早いクリスマスの雰囲気を一緒に分かち合い、翌日その人は出発しました。最初は困っていた私たちですが、結局家族はみんな、泊めてあげてよかった、と思いました。
このことを思い出すたびに、最初のクリスマスの夜のベツレヘムの羊飼いのことを考えます。羊飼いは天使から告げられたことを大勢の人に伝えて分かち合いました。あの寒い晩、見知らぬ旅人を泊めてあげたことは、クリスマスの豊かな喜びを分かち合う体験でした。神様はその喜びを分かち合うことを忘れないようにと、旅人を送ってくださったのだなと思うのです。

2023年12月24・31日号   12面掲載記事)