〝東海〟といえば、2023年、岐阜市の長良川国際会議場で開催された第七回日本伝道会議(JCE7)は、開催都市名を名乗らず「東海」と冠して行われた。

古代日本の行政区域・畿内七道の一つ「東海道」がその由来だが、当時は西は今の三重県から東は茨城県にまで至る太平洋沿岸の横長の地域で、原子力で知られる茨城県の東海村はその名残という。

現在は「東海」と言えば三重、岐阜、愛知の三県を指すが、これに静岡が入ったり入らなかったりするようだ。 この地域のイメージは、多分にトヨタを筆頭とする全国一の産業力(工業出荷額は愛知県だけで全国の約15%)に影響されるようだが、教会をめぐる状況は決して華やかではない。一教会あたりの人口比では、三重(第37位)、愛知(第42位)、岐阜(第44位)[※『データブック2023』日本宣教リサーチ発行]と、長らく「福音の谷間」と呼ばれてきた。

この地に福音的超教派牧師会である東海福音フェローシップが組織されたのは1988年のこと。おもな活動は毎年4月に開催する総会で、およそ50~70人が集まり、今年は第37回を迎える。地元ではTEF(てふ)と呼ばれるこの働きは、地域で教会形成に奉仕する教職者の連絡と交わりを目指すもので、何かの大会開催などを主導することはない。過去に6回開催されてきた東海宣教会議も、ほぼ同じメンバーがTEFとは別組織を作って開催するという気の遣いようである。

〝何もしないTEF〟が合い言葉とされ、そのゆるさが気楽に加入できる敷居の低さとなってこの地に定着してきたが、近年その様相も変化の兆しが感じられる。

前述のJCE7で、東海の開催地委員会は、独自に〝神の国のインフルエンサーとなる〟を掲げ、具体的な働きとして「S&Lネットワーク」を2022年9月から呼びかけた。地域の信徒が賜物を生かし使命感を共有しつつ、地の塩・世の光となるべく広く福音宣教に協力していく理念に賛同した人たちが現在で153件(※ゴスペルグループなども1件と数える)あり、24年にはメンバー同士のZOOM会合、フェスティバルや合同礼拝、在日外国語教会との積極的なつながりなどがなされようとしている。この働きが継続し 実を結んでいくには、それにふさわしいプラットフォームが不可欠となる。

この他に、南海トラフ地震を想定した東海キリスト者災害ネット(TCDN)は主流派や公益団体も協力し、在日外国語教会はアジアや南米などのさまざまな背景を持ち、さらに地域の認知や連携が必要とされている。

〝谷間〟にこそ育つ仲間があり、谷間だからこそできる協力がある。ウィズコロナの時代に〝何でもできるTEF〟への転換がはかられようとしている。

(あきやまなおみつ=東海福音フェローシップ総務、聖泉基督・中京聖泉キリスト教会牧師)

2024年01月07・14日号   09面掲載記事)