「祈り」つなぐ~JCE7各集会から⑦個人か、社会か、閉塞を越えて 「日本社会と宣教」「宣教と原発問題」
第七回日本伝道会議(JCE7)の各集会を宣言文「『おわり』から『はじめる』私たちの祈り」(以下宣言文「祈り」)に沿って伝える。連載第7回は「日本社会と宣教」と「宣教と原発問題」についての分科会から。
前回まで
☆① 全年代で「次世代」育てて 「次世代育成者のためのカンファレンス」上 2023年10月29日号
☆② 共に成長する姿見せたい 「次世代育成者のためのカンファレンス」下 2023年11月05日号
☆③ 日本的家族観をこえて 「次世代育成検討」「ファミリーミニストリー」2023年11月12日号
☆④ 確かな聖書的土台が現代に必要 「2030年に向けた青年宣教」「聖徒聖書学校連盟」 2023年11月19日号
☆⑤ 召命の確認/主にある多様性 「Samurai Projects」「平和研究会」2023年11月26日号
☆⑥ JEA再構築 〝外〟の仲間 「福音派の新しい宣教協力」と「神学校交流促進」2023年12月03日号
4.地域を越えた宣教協力を「はじめる」ことができるように
宣言文「祈り」の「4.地域を越えた…」では「固定観念から解放され、地域の事柄に柔軟かつ果敢に取り組むことで、世界に祝福をもたらす教会を建て上げていくこと」を祈る。
まずJCE7の、開催地、東海におけるプロジェクト「S&Lネットワーク ~信徒による東海4県宣教協力プラットフォーム~」は地域を越えた宣教協力の筆頭に挙げられる(10月8日号参照)。
JCE7プロジェクト「日本社会と宣教~分断化する社会に御国をもたらす共同体形成の模索~」は、日本社会とも共鳴する教会の閉鎖性に、神学的、宣教学的に光を当てつつ、この課題に取り組む教会の働きに焦点を当てる。「地の塩・世の光」となる具体的取り組みをモデルとして紹介しつつ、こうした働きをつないでいく。
セッションでは、まず西岡義行さん(東京聖書学院教授、東京ミッション研究所総主事)が孤立する社会におけるプロジェクトの意義を短く説明。続いて、佐々木炎さん(NPO法人ホッとスペース中原代表、NSKK・中原キリスト教会牧師)が、さまざまな社会的弱者を支援している自分たちの働きを紹介。それを受けて犬塚契さん(バプ連盟・ふじみキリスト教会牧師)が質問を投げかける形で論点をさらに掘り下げた。
後半は、非正規滞在外国人に対する支援の働きの紹介。井上貴詞さん(東京基督教大学教授)、渡辺聡さん(バプ連盟・東京バプテスト教会ミニストリー牧師)、阿部頼義さん(NPO法人「難民医療支援会」代表、ECC・グレースガーデンチャーチ牧師)が順にそれぞれの取り組みを報告し、多様な地域社会に入っていって隣人になることの大切さをアピールした。
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宣言文「祈り」では、「事実を風化させたり、他人事として見過ご」すことを戒め、「被災した方々とともに歩む意識」を喚起する。
分科会「宣教と原発問題」は、福島県沿岸で宣教を続ける住吉英治さん(同盟基督・勿来キリスト福音教会、双葉希望キリスト教会牧師)らが企画。稲垣久和・水山裕文共著『閉塞日本を変えるキリスト教 公共神学の提唱』(いのちのことば社)を中心に、原発問題と、その背景にある宣教課題を「公共神学」の視点で論じた(10月29日号に関連記事)。
分科会当日は、東京基督教大学名誉教授の稲垣さん、「連続起業家」の水山さんらが中心となる「シンクタンク・公共神学」の設立が発表された。
住吉さんは、急用のため当日出席できなかったが、発表資料が紹介された。原発事故後を振り返り、「生きる希望を無くした人に教会がどう寄り添えるか」などの宣教課題を挙げた。
稲垣さんは「原爆、原発、原罪」の題で講演。「教会は個人救済に焦点を当ててきたが、それでは大きな文明論的な課題に取り組めない」と公共的な視点の必要を示した。元々物理学者として歩んだ稲垣さんは、原子力の仕組みにも言及し、原子力を求める「構造的罪」にも触れた。
水山さんは、「日本の万物流転といった世界観との違いは、明確に主張しつつ、『共通恩恵』に基づく対話をしたい。個人か、社会か、の枠組み自体を問う公共神学の視点で考えたい」と話した。(つづく)
(2023年12月10日号 07面掲載記事)