【書評】小さな叫びに応える祈りと行動がある 『小さな命の帰る家』 評・福井生
本書は読み出したら止まりませんでした。松原さんの小さな命に対する真剣さ、その命を何とかつなげようと、祈りと行動によって奮闘される姿がまるで目の前で見ているかのように文章から伝わり、小さな命の数々が一体どのように「命のテーブル」に(この世界に)のせられていくのかを知るまでは最後まで本を手放すことができませんでした。
望んだ妊娠が、お腹の子に障がいがあることを知り、望まない妊娠と変わる時、それは大きな失望を伴い、受け入れることができない多くの夫婦がいます。松原さんは、その夫婦を責めることなく、それよりもそこに確かに小さな命が、たとえ言葉なく沈黙していても、一生懸命生きようとしていることに心をむけます。
そしてたとえ望まれていなくても、どの命も神様から望まれ愛されているのだと、何とかこの命を温かく育んでくださる方々(養親)へとつなげようと特別養子縁組の働きを始められました。
本書はどの頁をめくっても小さな命からの「生きたい」という叫びが聞こえてきます。そして命というものは人間が所有するものでなく、神様がそうしてくださったように無条件に受け入れられているのです。
そして読み進めていくうちに私は、この世界はまだ信じるに値することを深く心に感じました。なぜならこの小さな命からの叫びに温かいお心で答えようとする方々が確かに現われるからです。
その一人は他ならぬ松原さんでもあります。今、松原さんは「小さな命の帰る家」の立ち上げを祈り、スタートしました。この祈りは小さな命からの声なき叫びです。
私は今、止揚学園にて共に生活する知能に障がいのある仲間たちの笑顔の内に、仲間たちの声なき命からの叫びに、人間の未来への祈りが聞こえています。祈りは失望に終わることはありません。人間は共に生きていく存在なのだと希望を与えてくれます。
(評・福井生=止揚学園園長)
『小さな命の帰る家』松原宏樹、燦葉出版社、1,980円税込、四六判
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