インドの姉妹校から来日交流 止揚学園 言葉を超える豊かなかかわり
食事やゲームで交流を深めた
滋賀県東近江市にある重度の知的障がい者支援施設・止揚学園(福井生園長)に、インド・ケララ州の姉妹校「ナバジョティスクール」から理事長のヴィノウド・イーショウ氏、校長のヴァルギース・T・クリアン氏が来日。3週間にわたって生活を共にし、学びを深めた。
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ケララ州は十二弟子の1人トマスが宣教したと言われ、インド国内ではクリスチャンの比率が比較的高い地域。ナバジョティスクールを運営するM.C.R.D.の母体であるマートマ教団も、トマスが設立したと伝えられている。1981年に設立されたナバジョティスクールは6~30歳の知的障がいのある生徒たちの入所施設で、通所・入寮合わせて130人の教育が行われている。開校当初から止揚学園との交流が続けられてきており、今までに7人のスタッフが最大1年間の研修に来日。今回来日したクリアン氏も2000年に1年間を止揚学園で過ごした。
障がい者卒業後の居場所模索で視察に
インドでの障がい児・者に対する取り組みは、近年進んできているもののまだまだ厳しく、特に身体障がいに比べ、知的障がいへの対応は遅れているという。ナバジョティスクールでの教育を終えた子どもたちが家庭に帰っても、地域で生活することは難しく、居場所を見いだせない卒業生も珍しくない。
そこでナバジョティスクールでは30歳を過ぎてもいられるように、また生涯をずっと過ごせるようにと新しいプロジェクトが始まっており、そのための視察が今回の来日の最大の目的だった。
2人に止揚学園で一番印象に残ったことを尋ねると「コミュニケーションの豊かさ」との答えが返ってきた。「仲間たち」と呼ばれる止揚学園の入所者の多くは、言葉でのやり取りに困難を抱えている。しかしスタッフと共に思いを尽くし、心を通わせる中で得られているコミュニケーションには、言葉を超える豊かさがあることを強く感じたという。
ナバジョティスクールには国からの支援はまったくなく、すべて寄付で運営されている。イーショウ氏は自分たちの働きを「良きサマリア人のたとえ話に出てくる宿屋」になぞらえる。費用を預かって傷ついた人を実際に看病した宿屋のように、目の前の一人ひとりをサポートしながら共に歩んでいくことを願う熱い思いが伝わってきた。【山口暁生】