河野 優 石神井福音教会協力教師、日本同盟基督教団法人事務主事

主の栄光のため仕える喜びと恵み

「教会実務を考える」と題した2年にわたる連載も、いよいよ最終回を迎えた。第1回目の連載では、教会実務のイメージを「面倒くさい」と書いたが、それは各種実務の煩雑さや大変さといった客観的な印象によるものが大きいだろう。事実、教会実務の多くは面倒で煩雑な処理をしなければならないことが多い。こう書くと、教会実務は実に味気ない事務仕事のように見えるかも知れない。

教会実務が教会において、多くの人々に意識されるのは、実務上の問題や課題に直面した時ではないかと思う。事務処理は正しくやって当たり前というのが前提であるため、適切になされていれば、そこに光が当てられ注目することはほとんどないだろう。しかし、問題が起こると途端に光が当てられ注目される。当然と言えばそれまでだが、事務処理上のミスや実務上の問題が生じるときにしかスポットを当てられないとは、なんとも心苦しく心理的な負担も大きい働きである。教会実務の担い手が少ないのは、このようなところに問題があるのかもしれない。

このような状況にあって現実的に必要なことは「安心して相談できる専門家」「助け合い励まし合い学び合える同労者」の存在である。

「誰に相談すればよいか分からない」これは連載中に読者の方から実務的な相談や問い合わせをいただいたときの第一声である。ここで言う「誰」とは、直面する問題を解決するためにサポートしてくれる専門家である。

実務の問題は行政書士、土地家屋調査士、社会保険労務士、税理士、司法書士、弁護士などの専門家の力を必要とする場合が多いが、直接問い合わせるには心理的にもハードルが高く、どの専門家に相談するのが適当かわからない場合が多い。そこで、事案ごとに適当な専門家につなげることのできる仲介者などの存在やネットワークも必要だろう。

さらに実務の悩みや苦労、喜び、経験を分かち合い、ともに学び合う「同労者」が必要である。働きにおける課題や喜び を分かち合うことで慰めや励ましを得ることができ、ともに学び合うことで自分にはない経験や視点を得て、実務に対する考えや姿勢を整え深めることができる。私は実務に仕え始めたときから複数の同労者と、それを分かち合い学び合う場が与えられていたが、私にとってそれらは大きな喜びと励ましであったし、何より幸いであった。

教会実務の働きはトラブルを防ぐ予防的な体制を整えるとともに、問題に直面しても適切に対応できるよう備えておく、全地に福音を満たすために宣教に仕える教会にとって大切な働きである。だからこそ実務担当者は、主のために、主の教会のために、適切な実務管理運営に苦心しながら励んでいる。それが教会の宣教をともに進める重要な働きであることを知っているからだ。

スポルジョン『牧会入門』の次の一文に目が留まった。「私たちは実務能力の賜物を『捨て去り』、それとは縁遠い神秘的な影響力にたよったりしてはならない。……王なるお方の仕事を実際的に処理し、厳密で、理解力があり、鋭敏でいて冷静な判断力を備え、機敏でありながらも性急ではなく、熱心でしかも慎重である、というふうでありたい」

教会実務は一見して無味乾燥で面倒な事務仕事であるかもしれないが、それが「教会」実務である以上は「王なるお方の仕事」である。この仕事の目的は、王なるお方のみこころを実現していくこと、全地に福音を満たすことであり、キリストのからだなる教会をふさわしく建て上げることである。すべての教会がともに、教会実務に仕える喜びと恵みを深く味わいつつ、それをさらにふさわしく整えることに取り組んでいくことを心から願っている。すべてはただ主の栄光のために。

2024年03月03日号03面掲載記事)