異質性は教会のDNA 隣人「利用」ではなく「愛」を 第四回ローザンヌ世界宣教会議への旅⑥
第四回ローザンヌ世界宣教会議(9月、韓国仁川、オンライン)に向けて、毎週配信中の「ローザンヌ運動ポッドキャスト」(URLlausanne.org/podcast-series/lausanne-movement)から主要な論点を紹介する。第15~17回(1月配信)は、再び同宣教会議の基本資料「大宣教命令の現状報告」(以下「報告」、URLlausanne.org/report)について(連載第四回参照)。「報告」ディレクターのマシュー・ニューマンさんと専門家たちが語った。
前回
第15回配信は、「報告」のテーマの一つ「信頼」について。ニューマンさんは、「人々の大多数は、機関やコミュニティーよりも自分自身を信頼している」「宗教指導者よりも科学者を信頼している」「若者は宗教団体に不信感」といった分析を挙げ、教会の信頼の回復とともに、他の信頼できる機関と、共通善のために協力することを勧めた。
続いてロンドン現代キリスト教研究所の文化・弟子育成担当のデイブ・ベンソンさんが語った。「報告」では、格差拡大、階級やコミュニティーの分断などによって、他人を信頼できなくなるという世界的傾向を提示する。ベンソンさんは「インターネットにおいて、アルゴリズムに基づいて、人々がエコーチェンバー(同調する集団)に吸い込まれている」と人々の取り巻く状況を指摘した。
一方、聖書のシャロームのビジョンを確認し、「大いなる目的を達成するために隣人を利用するのではなく、隣人を愛するという美徳を持ちたい。物事や数字の達成、拡大志向が本末転倒を招く」と注意を促した。
第16回配信は、「人間のアイデンティティー」について。ニューマンさんは、「クリスチャンはテクノロジーに対して、無宗教者よりも、はるかに消極的」「LGBTQの受け入れは世代間に大きなギャップがある。アフリカ、アジアよりも、西側で受け入れられている」と現状を分析。「人間であることが何を意味するかというこの大きな問題に注意を払わなければ、主要な問題を見逃す」と強調した。
続いてバイオラ大学旧約聖書学准教授のカルメン・イメスさんが話した。「人間性の定義は、能力ではなくアイデンティティーだ。能力よりも神の似姿、という考えを踏まえれば、私たちの能力以上の機械を心配する必要がない」と語った。人工知能や医療介入などのテクノロジーについて「あくまで道具として使いたい。これらを使う動機を確認し続ける必要がある」と述べた。
障害や病気、遺伝子編集、中絶、安楽死、LGBTQなどについても言及し、「クリスチャンは先頭に立って、罪について語るが、神の創造の文脈を抜きにしている」と戒めた。
第17回配信は、「コミュニティー」を再考した。ニューマンさんは、都市化によるコミュニティーの変化に注目し、「教会は、聖書の枠組みから見たコミュニティーとは何なのか問いたい」と勧めた。
ディアスポラ宣教について、インド出身、米国で活動するサム・ジョージさんが語った。ローザンヌ運動では、2010年の第三回世界宣教会議で、移民にかかわる「ディアスポラ宣教」が戦略的重点分野に指定された。
「『移動』はキリスト教の信仰の本質」と言う。「人々が動いているのではなく、神が動いている。聖書の多くの記述は、移民によって移民にむけて、移民について書かれている」と述べた。「世界の他の地域から来た人々は、信仰についての理解を多様化させてくれる。異質性は神の民の教会のDNAの一部」と話した。【高橋良知】
(2024年08月04日号 07面掲載記事)