行政書士・社会保険労務士事務所えみたす

絵美さん

謙治さん

 

教会でお金の話はタブー視されがちだ。お金に関する社会制度の知識は、教会の健全な運営のために必要だが、忌避されることもある。牧師の生活など、「召しを受けて遣わされた以上、献げられたものの中で立てるもの」と、課題は見えにくくなっている。「行政書士・社会保険労務士事務所えみたす」の大森絵美さん、謙治さんに、解決のヒントを聞いた。【間島献一】

牧師と家族の生活のため 日本の教界の未来のため

社会保険労務士の絵美さんが多く受けている相談は、牧師謝儀について。牧師ではなく、教会の役員や教団の事務職から、「牧師を支えられていない」と相談されることが多いという。「間違いがあってはならない財務を、専門家でない信徒が奉仕で行うことに負担を感じる」という相談も。

「牧師職は〝雇用〟にあらず、という価値観は固い。しかし実態として、時間と生活を捧げる、お仕事なわけですから。名称こそ給与ではなく謝儀だが〝御礼〟ではない。それで牧師と家族は生活しなければいけない」

絵美さんは、牧師の年代ごとに意識の差があることも指摘する。「子育て世代の牧師に対して、『献げられたものだけで生活をなんとかしなさい』は難しいのではないか。『子どもに貧乏させるわけにはいかない』と話す牧師や、幼少時に苦い経験を持つ二世牧師もいる。そんな牧師の生活を知る若い世代から、牧師のなり手がいなくなれば、日本の教界に打撃です。私にも小さい子どもがいる。なんとかしないといけない、と使命を感じます」

牧師であるがゆえに救済されなかった、を無くす

牧師謝儀の相談に付随して、牧師の社会保険加入についての相談も多い。
「傷病で休業したり、障害を負ったり、死亡した時は、本人や家族に対し給付金などの救済制度がある。しかし国民健康保険と社会保険では、保障を受け取れる傷害の範囲が違う。牧師であるがゆえに救済制度にあずずかれないことがあるのは、おかしいことなのではないか」

「名称こそ謝儀でありつつ制度上は給与としたり、牧師以外を便宜的に代表者とし牧師を被雇用者としたりなど、社会保険加入のための方法は様々にある。社会保険料は教会・教団と牧師とで折半するが、その金額や事務処理についてなど、とにかく相談してほしい。ケースバイケースで何が最適か、個別に相談に応じています」

教会も教会員も安心して献げることができるよう

行政書士の謙治さんは、宗教法人に関連する役所手続きなど、公的な文書作成の働きを担う。遺言書(いごんしょ)もその一つだ。

「例えば、高齢で独居の教会員が、家で独りで亡くなった時、教会ができることは無い、、、、、、

2024年08月18・25日号 10面掲載記事)