【書評】こんな場=教会が地域にあったらいいな 『バザールカフェ ばらばらだけど共に生きる場をつくる』評・佐々木炎
本書は、バザールカフェという場の魅力を多角的に紹介する本となっています。バザールカフェとは、京都にある元宣教師館を改装したカフェを中心にした多様な活動の集合体です。そうした「場」の力とそこに集う人たちが織りなす触れ合いから、今までにない自由で暖かなコミュニティーが生まれていることをひしひしと感じます。バザールカフェを教会と読み替えると、教会の本来のあり方や隣人を愛するとはどういうことなのか、そして、人としてどのように自分はあるべきなのかを考えさせられます。
私たち教会も27年前、地域と共に生きようと願い、NPO法人ホッとスペース中原という組織を立ち上げ、世代を超えて多様な人へ支援を展開してきました。その自分たちの歩みを振り返るという意味でも、本書は非常に示唆的な内容でした。特に本書の中の「ただ一緒にいる」という文字と写真には、私の魂の奥にある憧憬を喚起させられました。
牧師や福祉職は専門性を駆使して活動することで慰めたり、癒やしたりする変化を働きかけます。でも、バザールカフェでは「ただ一緒にいること」、変えなくても、変わらなくてもそのまま一緒にいることこそが大切なのだと。この安心の中でそれぞれが自身を再考しながら自ら変化し、ときに互いに助け合っていくことが生まれるのです。これは神が、私たち一人一人の側に無条件にいてくださることにも通じているのです。
現代社会で生きる私たちは、「自分は自分、人は人」と他者とのつながりが薄れていく中で疲弊し、バザールカフェのような「場」、つまりコミュニティー(共同体)を探求しています。
「こんな場所が地域にあったら、そしてそれが教会であったらいいなあ」とつくづく思わされます。牧師や福祉専門職だけではなく、ぜひ教会や自身の在り方を模索しているすべての人が手に取って読んで欲しい書です。
(評・佐々木炎=日本聖契キリスト教団中原キリスト教会牧師)
関連記事