《連載》世の目 人の目 聖書の目㉖ 現代日本の消極的な「若者らしさ」
碓井 真史 新潟青陵大学大学院教授/心理学者
子ども・若者は、私たちの希望だ。元気に活動する子ども・若者の姿は、教会にも、社会全体にも、活気を与えてくれる。けれども、子ども・若者に関するニュースは、暗いものも多い。
日本の子ども・若者は良い子たちだ。国際比較をすれば、少年犯罪も少なく、学力も優秀。だが問題は、自信がないこと、打たれ弱いことだろう。自己肯定感に関する調査によれば、欧米と比べてもアジア諸国と比べても、日本の子ども・若者は自信がない。自分は親のような豊かさや教養を持てないだろうと語る若者も多い。
「近ごろの若者は」といった批判は、大昔からある。しかし以前の批判は、過激だ、乱暴だ、といった批判だ。たとえば、かつて大学は、学生の過激な行動を防ぐために学生たちを分断し、力を奪ってきた。しかし現在では、学生たちを連携させ、力を与えることに懸命だ。
現代の子ども・若者は、覇気がない、元気がない、がむしゃらさがないなどとも言われる。マスコミは、せっかく入社したのに、すぐに辞めてしまう若者たちを報じている。しかも、自分で辞表を出さず、退職代行業者を頼る若者もいる。
リクルート社の担当者が語っていた。以前であれば、「さあ、これから就職戦線の始まりだ! みんな頑張るぞ!」と学生たちに激(げき)を飛ばしていたという。しかし今、こんなことを言うとみんな逃げていく。現代なら、「大丈夫だよ。君のことを待っている会社もきっとあるからね」といった優しいアプローチをしなくてはならない。
愛を土台とした寄り添いとは
NHKは、若者に対して「君の声が聴きたい」プロジェクトを始めている、、、、、
(2024年05月19日号 03面掲載記事)