9月に行われた「日・独・瑞教会協議会2024」(9月29日号で一部既報)のプログラムから、「特定宗教を超えたワークショップ」の内容を抜粋掲載する。

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白井聡氏(=写真=、京都精華大学准教授)が基調報告。露・ウ戦争はウクライナ国内や東欧の問題にとどまらず「グローバル南北戦争」の構造だと定義。露国の帝国主義に敵対し、概ね北半球の先進国が経済制裁をかけているが、概ね南半球の途上国にとっては両者とも同じ、意思を押し付け収奪する帝国主義である。先進国との経済格差が縮まったグローバルサウスは、経済制裁に参加しないことで拒絶の意思を表せるようになった、と解説。
その上で、「与野党がともに抱く、米国が守ってくれるという幻想」が日本を、露国と敵対しつつも準加盟国であるがゆえNATOの集団的自衛権行使対象ではないウ国のような、危険な状態にしようとしていると指摘。「南北陣営を仲介し世界平和に貢献するか、幻想を抱いたまま破滅するか、私たちは岐路に立っている」と論じた。


上中栄氏(=写真=、元日本ホーリネス教団歴史編纂委員)が基調報告。「正戦論を掲げる偏狭な宗教を忌避し、多神教は寛容だと自画自賛する日本の実情を、日本のキリスト教は覆すことができていない」と分析。日本のキリスト教の、権力と結びついたことも自由を勝ち取った経験もない、という特性を逆手に取れば、キリスト教の主体性をもって市民目線の訴えと取り組みができるのでは、と提言。「現状の日本のキリスト教に非戦を語る資格はないとさえ思う。危機意識を深め、思想を鍛え、信仰の内容を吟味する。そのために対話が必要である」と語った。


ツォルナ・ラインハルト氏(=写真=、ドイツ、ボン大学・日本学教授)はルターとカルヴァンがそれぞれ考える国家の役割を、正義と秩序を守る消極的な役割、正しい戦争の原則にこだわる積極的な役割、と比較分析した。


ペーター・ニクラウス氏(=写真=、スイス、カールバルト財団)は、神学がイデオロギーと結び付けられ福音が薄められている現状を警告し、神学的、倫理的、社会的、政治的リアリズムを持つ必要性を訴えた。


吉高叶氏(=写真=、NCC議長)は、終わりの時を招き寄せつつある今、剣と槍を打ち直すことこそ、神の要求、キリスト者の存在意義だ、と結んだ。

【間島献一】

2024年10月13日号 02面掲載記事)