牧師、神学者、オーガナイザー、プロデューサー等々いくつもの顔を持ちながら、いつも飄々(ひょうひょう)とした雰囲気と軽快なフットワークで日本のキリスト教界のエキュメニズム(カトリック教会とプロテスタント教会、そのうちの主流派と福音派の交流、そして諸宗教間の対話など)を体現し、しかもそれらを一貫して地に足を着け、足下の歴史を掘り下げ、生身の人間と出会い、その声に耳を傾けながら実践している希有な存在。それが川上直哉牧師です。

その川上牧師が東北・石巻に身を置きつつ、南アフリカの宣教学者デイヴィッド・ボッシュの著書『宣教のパラダイム転換 上・下』(東京ミッション研究所、2004年)を読み続けてきました。本書はその実践をキリスト教ラジオ放送局FEBCの長倉ディレクターが聴き手となり、6回にわたって語り合った対談の記録です。

本書の特色を一言で言い表すなら「対話の書」となるでしょう。川上氏はボッシュの書をテーブルの上に置くのでなく、それを東北の歴史と対話しつつ教会の現場で徹底的に読みほぐし、その実りをテーブルにし、ボッシュの書の上で長倉氏と対話しています。

長倉氏の素朴な問い、深い掘り下げ、対話を進める頷(うなず)きなどによって、その対話はさらに豊かにされ、川上氏は力強く、しかし力むことなく、しなやかに、しかし確たるものを持って日本の福音宣教の希望を縦横無尽に語り尽くす。そこで示される福音の理解は読む者に自省を促し、気づきを与え、時には刺激に満ちたチャレンジを与えるものでもあります。

内容のすべてに首肯する必要はないでしょう。著者は私たちの内に自覚的にか無自覚的にか身に着いてしまっている日本の教会の福音理解、宣教理解、キリスト理解のパラダイム(枠組み)を揺さぶり、問い直し、そこから新しい希望が生まれるための対話に読者を招いているのです。なお「はじめに」や「東北ヘルプ」掲載記事もあわせて読む時、同書のリアリティーは一層増してくるでしょう。
(評・朝岡勝=日本同盟基督教団市原平安教会牧師)

 

『私の救い、 私たちの希望 ボッシュ「宣教のパラダイム転換」を被災の地で読む』
川上直哉著、ヨベル1,980円税込、四六判

 

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