組織内で密かに「来臨のキリスト」と信じられていると多くの証言があるダビデ張こと張在亨氏(ジャン・ジェヒョン=ワールドオリベットアッセンブリー創立者)が世界福音同盟(WEA)に影響を行使していることが問題視されてきたが、日本福音同盟(JEA=廣瀬薫理事長、岩上敬人総主事)の機関誌JEAニュース6月付(No.55)に、前WEA国際理事の植木英次氏(前JEA国際渉外室長、アジア福音同盟=AEA=議長)が実態を報告した。

「異端の企てに用心を」と題した巻頭記事で植木氏は、前WEA総主事のジェフ・タニクリフ氏がダビデ張氏と「密接な繋(つな)がりをもってしまい、WEAの実態を変えてしまった」と指摘。だがその後WEAの体制浄化が進み、昨年ジャカルタで開催された総会では張グループの存在は影をひそめたという。

張氏がWEAに近づいたのは十数年前から。2005年にWEAは情報ネットワークの国際拠点となるITセンターを米国カリフォルニア州サンフランシスコに開設したが、その際ダビデ張氏は自身のオリベット大学の建物やコンピュータなど機材、人材を提供した。その貢献に対し張氏はWEAから感謝状を受け、「WEA北米理事」の肩書を得たほか、オリベット大学はWEAの「グローバルパートナー」と称するようになった。

16年にWEAはニューヨーク州ドーバーに国際会議や訓練プログラムを開催できる「エバンジェリカル・センター」を開設し事務局を置いたが、その施設はオリベット大学が所有するキャンパス内の一部だった。

植木氏はJEAニュースで、「張氏からの資金、人材や場所の提供を受けたタニクリフ氏は、WEAにIT委員会を発足させ、他にもさまざまな張氏の要求を受け入れました。そしてIT委員会には、張氏と深い関係にあるオリベット大学の卒業生が多く送り込まれる結果となりました」と経緯を説明している。

JEAは韓国での張氏に関する統一協会前歴報道を踏まえ04年6月に「クリスチャントゥデイの取材を一切受けない」と表明して以来、歴代総主事がWEAに対し、ダビデ張氏の疑惑への注意を促してきた。当時タニクリフ氏は「問題ない」との態度に終始したが、15年からWEA総主事に就任したエフライム・テンデロ氏は多方面から情報を集め、慎重に問題に向き合った。

そうした中、AEAを通じてWEAが張氏と繋がりを持つことの危険性を発信してきた植木氏が18年にWEA国際理事に就任。国際理事会で張氏に関して日本で起きていることを証言し、理解が深まったという。折しも同年、ダビデ張氏の関連団体インターナショナル・ビジネスタイムズ(IBT)や、クリスチャントゥデイ(CT)、クリスチャンポスト(CP=米国)などを傘下に置くクリスチャン・メディア・コーポレーション(CMC)、オリベット大学の幹部らが、IBTメディア傘下のニューズウイークを巡る35億円相当の巨額詐欺・マネーロンダリング容疑でマンハッタン地方検察庁から起訴された(20年2月に有罪確定)。これを機に、「WEA指導者たちは張氏との繋がりの危険を感じて、きっぱりと繋がりを断ちました」。

植木氏によると現在、張氏関係者はWEA下部組織の一部に残っているものの決定権を持つ国際理事会メンバーにはいない。事務所はニューヨーク州のオリベット大学内からイリノイ州のトリニティ国際大学内に移転しIT管理も張氏関係者の手を離れている。張氏関連メディアが今も肩書を利用する「WEA北米理事会」は消滅。規則に則った運営をするよう浄化が進み、各国・地域の福音同盟が投票権をもって決定する体制に徹底した。WEAは会員、加盟団体と福音の伝播のために共に力を合わせるが、WEAとして加盟団体を「公認」することは行っていないという。

植木氏は記事の締めくくりで、異端とされる団体からWEA総主事が招かれて講演した例などが他にもあることに触れ、「福音派と行動を共にして、その事実を利用しようとする異端の企て」に注意を喚起している。

 

【JEAニュース全文】

https://jeanet.org/wp/wp-content/uploads/2020/07/JEA_news_55.pdf

 

【関連記事】オリベット組織有罪 米国で詐欺・資金洗浄認める

オリベット組織有罪 米国で詐欺・資金洗浄認める