本書は、長年にわたって多くの韓国の神学大学で、組織神学の教科書として愛用されてきた、神学入門書の日本語訳である。著者は日本ではまだあまり知られていないが、韓国の神学界では著名な組織神学者であり、多くの著作を世に出し、特にユルゲン・モルトマンの研究者として知られている。
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個人的なことになるが、以前訳者の朴宣教師と渡韓した際、李師が長年教鞭(べん)を執ってこられたソウル神学大学校で懇談の時が与えられ、その博識と温厚な人柄に魅了されたことを今でもよく覚えている。
著者の前書きによれば、本書は「青年と若い神学生、そして成熟な信仰を求める一般信徒の組織神学の有用な手引書」となることを目指している。そして著者はこの書の日本語訳が、「緊張が続く日韓関係のより緊密な交わりと一致を実現するためのスプリングボードとなること」を強く願っている。
入門書とあるように、初めて組織神学を学ぼうとする者にとって、必要なテーマについて、全体を網羅し、わかりやすく紹介している書である。組織神学の本というと、欧米の神学者の翻訳物が多く、しかも何巻にも及ぶ書が多く、一冊物でも大部のものがほとんどである。その点本書は、本文が330頁余にまとめられ、大切なポイントをしっかりと把握することができる。
著者は韓国の教会の現状、特にメガチャーチの指導者たちの堕落や信徒の御利益を求める「成功信仰」に警鐘を鳴らしており、その処方箋としてしっかりした読書に裏付けられ、バランスのとれた神学知識が肝要であると提言している。
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本書は、組織神学の定義から始まり、信仰とは何かを論じ、神論、創造論、人間論、キリスト論、聖霊論、教会論、終末論と組織神学を学ぶ上で必要とされるテーマについて、聖書に基づき、しかも歴史的な背景を十分ふまえながら、公平に論じているので、流れがよくわかる。特に心に残った言葉は、「信仰は人間の全人格的な信頼の行為であり、盲目的な信仰ではなく、理解を求める信仰こそ成熟な信仰を生み出す」という提言であった。従来の組織神学の概論とは一味異なる本書を心から推薦する者である。
(評・中村敏=新潟聖書学院前院長)

『キリスト教神学とは何かー組織神学入門』李信建著、朴昌洙訳 
ヨベル社、2,200円税込、四六判

[レビュー1]葛藤や痛みも複眼的・客観的に語る教会形成史 『カンバーランド長老キリスト教会 高座教会七〇年史』評・濱野道雄2020年7月25日

[レビュー3]『今、礼拝を考える』『教会でも、がん哲学外来カフェを始めよう』『世界社会の宗教的コミュニケーション』2020年7月27日

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