日常から離れ、神が創造された自然を近くに感じ、信仰を深め、様々な決心の場となってきたクリスチャン・キャンプ場。本来夏は青少年のキャンプが目白押しだったが、今年はコロナ禍で多くがキャンセルとなった。経営的にも大きな打撃となっている。本紙では紙上とオンラインを組み合わせ、連載で各地のキャンプ場に思いをはせる。その第四回目。

前回は キャンプと創造③ 自然の中で神様に近づく 日本バイブルホーム2020年8月28日


写真=ACCホームページより

火事からの再開、軌道に乗り始めたころのコロナ禍

―青森市の市街から車で約30分、八甲田山のふもとの森の中に、青森クリスチャンセンター(ACC)がある。青森育ちの宣教師ルカ・エリオットさんと北海道生まれの優子さんの夫妻がディレクターに着任したのは、2015年。最初の一年は前年に起きた施設の火事の片づけに費やされた。16年から徐々にキャンプを再開し、18年から本格始動を展開していた矢先に、今年のコロナ禍に見舞われた。

 

ルカ 今年春に予定していた施設改修の建築プロジェクトが1年延期になりました。海外からのスタッフが入国できなかったのです。このプロジェクトは、ACCとして大きな一歩になる予定でした。ただ海外からの資材の運送はキャンセルできず、キャンプ場のスタッフで受け入れました。このためにフォークリフトや大型の免許をとりました。来年春に無事工事ができるように祈ってください。それまで資材をしっかり保管しないといけません。

 

―例年夏は、海外からの短期宣教でのスタッフ派遣などに助けられたが、彼らも今回は入国ができなかった。

 

ルカ 地域の牧師先生方による運営委員会でキャンプ開催について話し合いました。様々な議論がありましたが、青森県は比較的感染症の影響が少なく、ACCとしては、学校や施設などの基準を参考にしながら、衛生管理をして、一部のキャンプを実施しました。スタッフも少ないので、親子キャンプという形にして、様々なフォローをしながら開催しました。

 

優子 大々的に宣伝はせず、関係のあるところや、キャンプの要望があるところ、気持ちよく来られる人たちに限って案内しました。コロナ禍の状況で出かける場所も限られ、「やってもらってよかった」という声もありました。何とか守られて開催できました

 

ルカ もともと施設の関係で利用できる人数に限界があったのですが、結果的には例年に近い人数で開催することができました。でも他のキャンプ場が同じようにできるわけではありません。キャンプを開催できなかった全国のキャンプ場の重荷を覚えつつ祈っていかないといけません。

自然の中で神を知る

同世代と出会い、「孤独でない」を知る


写真=この夏のキャンプの様子 

ACCフェイスブックページから

 

―キャンプの魅力とは何だろうか。

ルカ 目が開かれる経験をすることです。シオン錦秋湖の前ディレクターがおっしゃていたことですが、家庭でも教会でもない、別のところで聞く声が大きな一歩になるといいます。私もそのような体験をしました。同じ体験をした証しを多くの人からも聞きます。いつもと違う場所で、しかも神様の被造物である自然を近くに感じ、神様の言葉を聞くことがキャンプ場ではできます。市街に住む人はあまり身近に感じない生き物や植物に感動し、神様に目を向けられるのは、非常に大事なこと。『やめよ。知れ。わたしこそ神』と詩篇46篇にあります。

 

優子 非日常空間ですね。

 

ルカ もう一つのことは、少年時代の孤独があります。宣教師の両親は漁村で開拓伝道をしていました。幼い時は同世代の子どもたちが教会に来てくれましたが、ファミコンが出てくるなどして、だんだん同世代の子たちは来なくなり、さみしい思いをしていました。けれどもキャンプでは同世代のクリスチャンと出会えます。いろんな教会のクリスチャンと過ごす時間は大事です。さらに県外や海外の人と出会えるとさらにいい。それができる少ない機会の一つがキャンプです。

 

持続可能なクリエーションケアと地域のつながり

写真=ACCフェイスブックから

―豊かな自然と向き合う取り組みもしている。2人が所属する宣教団体OMFは、2012年に世界的な宣教ネットワーク、ローザンヌ国際協議会が出した「ローザンヌ国際協議会 クリエーションケアと福音- 行動の呼びかけ」(https://www.lausanne.org/ja/content-library-jp/statement-jp/call-to-action-jp)を批准している。同呼びかけは、神のクリエーション(被造物)のケアが福音の核心の一つであることを確認し、差し迫った環境破壊などの問題に取り組むことを促す。

 

ルカ 呼びかけの具体的内容は地球規模の大きなものもあるのですが、ACCとして取り組めると思ったのは「食物生産における持続可能な原則」と「クリエーションケアの地域的表明」でした。2年前からカナダのスタッフとコミュニティーガーデンの取り組みを始めました。日当たりの関係で施設内では難しいのですが、近くの休耕している畑を借りられたらと思います。夏のキャンプの中でもクリエーションケアに特化したキャンプを開催したり、あるいはすべてのキャンプでクリエーションケアのテーマを盛り込めるようにしたりできればとも考えています。まだ18年から始まったキャンプなのでこれからの働きです。

 

―「クリエーションケアの地域的表明」については、まず村の子どもたちを割引でキャンプに参加できるようにした。

 

ルカ はじめはクリスチャンではない子向けに英語キャンプを開き、クリエーションケアのテーマを盛り込んでやっていたのですが、むしろクリスチャン向けのバイブルキャンプに参加してくれ、楽しんでくれました。今後は地域の子ども向けに別のプログラムをつくるのではなく、バイブルキャンプ一本でできると思います。大人向けの英語キャンプは継続します。

 

―近隣とのつながりでは、昨年から地元の教会の牧師の紹介で、オーガニックガーデンや自然保護に関心を持つ人とつながりをもった。その人や、牧師、地元の大学の教授、学生、そしてACCを交えて、「エコビレッジ」を打ち出した地域おこしを構想している。9月から本格的な話し合いが始まる。キャンプ場の近くには、温泉施設やスキー施設があり、それらの再生も話題になっている。

 

ルカ クリスチャンとの協力で世界や全国とのかかわりがありますが、地域の隣人との協力の取り組みも大事です。同じ地域に存在する中で、関係しないというのではなく、隣人として、より良い関係をもち、助け合えればと思います。

 

優子 日本や先進国で少子高齢化が問題の中、社会も教会も、もっと早くに持続可能性、サステナビリティに取り組んでいくべきだったかもしれません。キャンプ場だけを見れば、人手不足、利用者の減少ということになりますが、諸教会においても信仰継承の課題がありました。ACCも利用者が減り続け、その中での14年の火事でした。「もう閉じようか」というあきらめムードもありました。近年ではキャンプ場の閉鎖という問題だけでなく、教会の閉鎖という課題も広がっています。教会が持続するためにこそACCがある。諸教会へどのように協力出来るかという視点を通してACCの働きを考えていかないといけないと思っています。

―ACC周辺には八甲田山、奥入瀬渓流、三内丸山遺跡、白神山地、十和田湖、など雄大な史跡、自然景勝地がある。

 

ルカ 短期宣教師とともに、八甲田山を巡るハイキングコースを考えています。先日は白神山地も調べました。今までやりたいと思ってできなかったリサーチができたのはコロナ禍の中にあっても幸いなことでした。

 

青森クリスチャンセンター

TEL017-757-8766 HP https://www.accmoya.com

【献金先】青森銀行 黒石支店(店番401)、口座番号1140136、口座名義 青森クリスチャンセンター 理事長 山道忠郎(ヤマミチタダオ)

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