コロナ禍を、生命の意義や生き方を問い直す機会として用いたい。『見出された命 聖句断想6』(小島誠志著、教文館、千980円税込、B6変)は、各ページに短い聖書の抜粋と応答がある。「突破」「鎖でさえ」「近寄る」「見つけ出す」「手を放す」…目次にずらっと並ぶ、端的なタイトルを見るだけで興味をそそられる。たとえば「突破」は使徒10章11節から。「いくら考えても、考えというものは堂々めぐりをします…」と私たちの現状を指摘して、わずか5行の中で生き方を変えるヒントを提示する。


 『コヘレトの言葉を読もう』(小友聡著、日本キリスト教団出版局、千540円税込、四六判)の新鮮な視点は、終末思想との対比で「コヘレトの言葉」(伝道者の書)を読むことだ。このときの終末思想とは、現世を否定し、来世にのみ期待を置く生き方。「コヘレトの言葉」が伝えるのは、未来が見えない中で、神に信頼し、「今」を生きる生き方となる。


『人生―人として生まれ、人として生きる』(柏木哲夫著、いのちのことば社、千320円税込、B6判)は、精神科医、ホスピスの開拓者として歩んだ著者のエッセイ。自身のキャリアを振り返り、その時、その時の決断と神に委ねる姿勢を語った。後半では引退後の「老い」をテーマに、チャプレン経験もある窪寺俊之氏と対談。2人は同じく80歳だ。人生観やケア、仕事と教会のテーマとともに、90歳を超えてもチャレンジ精神にあふれた日野原重明氏についても触れる。


コロナ禍で、社会の不条理が一層あらわになり、平静でいられない人々もいるだろう。『現代のバベルの塔 反オリンピック・反万博』(新教出版社編集部編、2千200円税込、新教出版社、四六判)は明確な「否」を主張する論集だが、基調は人々を従順に飼いならす「統治」への批判。「バベルの塔」は人間の堕落や傲慢さの警告だけではなく、「一つの言葉」で人々を動員する権力者を神が砕き、人々を「散らし」、解放したと解釈する。牧師、哲学者、社会学者、路上生活者が寄稿、対談。労働者、野宿生活者、植民地、女性、障がい者の視点から論じ、巨大イベントに動員する都市、国家の背後に、人々を排除する「線引き」「優生思想」「隠ぺい」があることを指摘する。

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