[レビュー2]慰めを求めるすべての人に届く一冊『スピリチュアルケアと教会』 評・清田直人
「スピリチュアルケアとは何か?」との問いに正解はない。しかし、スピリチュアルケアに関する長年の研究に裏付けされた窪寺氏のスピリチュアルケア論は、その正解のない「ケア」に携わる援助者に励ましと勇気を与えてくれる。
本書は2019年に神戸改革派神学校で行われた講演内容を編集したものである。窪寺氏は、実存的な苦悩とも言うべきスピリチュアルな問題は、治療を中心とした医療では対応できないと指摘する。スピリチュアリティが「私と私」「私と神」といった「垂直関係」を通して、その人に「生命の根拠を見出させていく」という特徴を持つ以上、スピリチュアルな問題に対応するには、問題解決を目的とする「治療」ではなく、その「垂直関係」を扱える「ケア」が必要となるからである。
また本書は、一般的に誤解されやすい「宗教的ケア」と「スピリチュアルケア」との違いや特徴についても、分かりやすく丁寧に説明されており、多角的にスピリチュアルケアを捉えていくことでよりいっそう理解が深まる。さらに、スピリチュアルケアを提供する際に求められる「寄り添い」や「傾聴」、ケア対象者へのアセスメント(評価)の仕方など、実践に即した内容にも触れられているので、スピリチュアルケアに難渋している援助者にとっての光明となるだろう。
また特筆すべきは、各章の最後に収められた講演後のディスカッションの様子である。著者が、「私が意図したことは、自由に考え、納得できる信仰をもつこと」だと語っているように、単なる質疑応答や意見交換の場にとどまらず、ディスカッションそのものがスピリチュアルケアの様相を呈しており、読者もまた窪寺氏の慈愛に満ちた人柄に触れることで読者も慰められるに違いない。
キリスト教関係者や医療従事者のみならず、慰めを求めているすべての人に読んでいただきたい一冊である。
(評・清田直人=栄光病院チャプレン)
『スピリチュアルケアと教会』
窪寺俊之著
いのちのことば社、1,650円税込、B6判