「香港を覚えての祈祷会」第3回から 「神の視点に別の方法ある」

“祈りは敗北で終わらない”

中国政府が香港の選挙制度の見直しをするなど、香港の一国二制度が崩れつつある。移民や愛国主義教育が本格化しようとしている。そのような状況の中、日本の有志の牧師らで続けられている「香港を覚えての祈祷会」の第3回(3月29日、オンライン)は、祈りの重要性と希望への視点が強調して語られた。全体の連祷の中では、香港をはじめミャンマーなど世界の「不正義と不寛容の嵐」に思いを寄せ、祈った。【高橋良知】
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奨励は前キリスト者学生会(KGK)総主事の大嶋重徳さん(鳩ケ谷福音自由教会牧師)。1993年、学生時代に、KGKを通してIFES(国際福音主義学生連盟)東アジア地区大会に参加した。当時は97年の中国返還を前に香港から海外流出が広がっていた。「私はとどまろうと思う」と、同世代の香港の学生が泣きながら祈っていた姿に衝撃を受けた。2019年にはIFES東アジア地区の代表者で集まったが、「香港がこのようになるとは思わなかった」と驚きを隠せない。

奨励では使徒12章1~7節から語った。使徒ヤコブが殺され、ペテロが牢獄にとらえられるなど、初代教会にとって最大の危機が訪れていた。「教会はこの時、熱心に祈りを続けた。祈りがかなえられず失望した経験もあるだろう。しかし、教会が祈りを止めなかったのは、祈りの力を知っていたからだ。海を別けたモーセの祈り、血の汗を流したイエスの祈り、十字架の上のイエスの祈りを、初代教会は知っていた。祈りは敗北で終わらず、復活の勝利があることを知っていた。ペテロの救出だけでなく、ペテロが最後まで証しと伝道に生き抜くことも祈っていたはずです」

その後、ペテロが牢獄から抜け出したとき、それを人々が信じられなかったエピソードにも触れ、「不信仰で自信のない祈りでも、神様は忘れていない。ペテロを牢獄から助けたように、香港の兄弟姉妹をすべての災いから救い出す。やがて祈りの意味が分かるときが来る。香港で苦しんでいる兄弟姉妹のために神のわざが働かれることを祈り続けよう」と励ました。

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証し・報告として香港から神学教育にたずさわる教師が、香港の教会・神学校が直面する課題と新たな展望について語った。「今のところ、牧師が逮捕される事態は起きていないが、デモの最前線に立っていた牧師らが亡命に追い込まれている。公務員は政府への忠誠を誓うサインを義務化された。教員や牧師もやがてサインが必要になるのでは」と危惧する。

愛国教育が進む状況、フェイクニュースが流れイデオロギーに偏向する社会状況が、「『香港政府や中国政府を愛さなくてはならない』という空気を作っている」と指摘し、「牧師たちは、何が真理で何が偽りか判断する力が必要」と述べた。
さらに香港からの移民も現実化している。「たくさん信徒が海外移住するか、自分の子どもだけを海外に送る、ということが起きている。信徒の人数が不安定になり、教会も神学校も大きな影響を受ける。実際に多くの神学校で去年の入学生はかなり減りました」

「社会は絶望の雰囲気。今の状況に神学校の教育内容をどう適応させるか、福音はどのような意味があるか、を考えないといけない。社会の中、学校の中でたくさんの抑圧があって、希望が見えないという雰囲気が、若者の中にある。新型コロナウイルスで仕事を失ってしまった人もたくさんいる」と厳しい現状を語った。

しかしこの状況の中でも、「新しいミッションが生まれている」と言う、、、、、、、

2021年4月11日号掲載記事