宣教のビジョン 時代を反映 大挙伝道から多様な宣教へ 世界の転換に伴う変化も映して

 教会協力による伝道

「教会宣教に新時代 総決心者一万五千余 グラハム国際大会勝利のうちに終わる 宣教の戦いはこれから」
1967年10月、東京で開催されたビリー・グラハム国際大会の様子を伝えた本紙11月5日号1面の見出しだ。会場となった後楽園球場の写真説明には、「大会最終日は嵐のあとの快晴。スタジアムに集まった大会衆は、新たな歓喜にひたり、神の栄光をそこにみた」との文字が躍る。日本宣教に対する当時のクリスチャンたちの高揚感が伝わってくる。

創刊時の標語の一つ、「宣教のビジョン」を語る上でまず挙げられるのが、ビリー・グラハム国際大会をはじめとする大挙伝道だろう。
創刊の年、本紙は準備段階からビリー・グラハム国際大会を毎号のように報道している。しかも大会が、財政面でも伝道計画でも日本側の立案と実行にゆだねられた、日本人自体の責任で行われる超教派運動だという点を強調する。

ビリー・グラハム国際大会は1980年、1994年にも開催されたが、収穫の時代は始まった」(80年11月2日号)「単純な福音 2千人を決心へ」(94年1月23日号)との見出しで、どちらも1面で大きく取り扱っている。息子のフランクリン氏の時代では、2年前の2015年11月に東京・千代田区の武道館で開かれた「セレブレーション・オブ・ラブ」が記憶に新しい。この時は開催期間中、集会の様子を号外を配って伝えた。 このように「教派を超え、教会同士が互いに協力し合って行う大挙伝道」について、その都度報じてきた。

大衆伝道者の本田弘慈氏、ラジオ牧師の羽鳥明氏は、日本全国津々浦々を回り、総動員伝道というプログラムを行って来た。「イエス・キリストを伝えるために一緒にやりましょう」と、伝道という一点で、地域教会レベルで教派を超え協力し、伝道集会を行うというもので、信仰決心者だけでなく、地方の教会が互いに知り合い協力関係を結ぶという実を生んでいることを報じている。

太平洋放送協会(PBA)を中心とした放送伝道も、地域教会が協力していく上で大きな役割を果たした。PBAは各地の教会に呼びかけ、協力会を作っていったため、協力会のある地域は、テレビ伝道、ラジオ伝道の協力関係がある。新聞過去記事
90年代には全日本リバイバル・甲子園ミッション(93年)、日本武道館で10日間行われた東京リバイバルミッションなどが、紙面を飾っている。
2000年代には、ハ・ヨンジョ氏の日本宣教のビジョンで07年に始まった、韓国オンヌリ教会と地域教会との協力で行う伝道イベント「ラブ・ソナタ」を報じてきた。韓流という文化を用いた伝道イベントで、従来になかったスタイルだ。このラブ・ソナタは10年経った今も各地で続く。こちらも本田氏の日本縦断クルセードと同様、地域教会の協力関係という実を結んでいる。本紙は立ち上げ当初から紙面で紹介してきている。

 リバイバルを伝える

もう一つの視点は、リバイバル(信仰復興)だ。クリスチャン新聞は創刊当時から、国内だけでなく海外にも目を向け、報道してきた。特に当時の編集部と韓国教会との深い関わりの中で、その状況が詳細に伝えられている。

1974年9月1日号は、8月に韓国ソウルで開催された「エクスプロ74」の記事が「アジアにキリストの季節到来」「史上最大!! 民族福音化に慟哭の祈り」の見出しで1面を飾る。参加者のべ650万人、世界84か国、日本からも千人が参加した集会の模様を、写真と記事で紹介し。戦後、儒教文化圏でキリスト教が急成長し、社会現象としても注目に値する隣国の韓国のことを当時、いちばん詳しく書いていたのがクリスチャン新聞だった。

71年6月20日号では、元ヒッピーの若者たちが次々に回心しているという、米カリフォルニア州で起こったジーザス・ムーブメントの様子を1面で伝える。
中国地下教会の情報もいち早く報道した。当時の守部喜雅編集長は、72年の日中国交正常化後、すぐに上海に行った。そこで、中国は文化大革命でキリスト教が壊滅状態と言われていたが、実はクリスチャンたちが家の教会でひそかに集会を持ち、口伝えに福音が広がり、クリスチャンが増えつつあるというニュースをつかむ。まだどこも情報をつかんでいない時代に、クリスチャン新聞は中国のリバイバルについて記事を書いていた。

80年6月15日号では、23年間の獄中生活から解放されたばかりの王明道牧師、83年4月24日号では家の教会指導者のママ・クワング夫人のインタビュー記事を1面で紹介している。エクスプロ
そのほか、旧共産圏(旧ソ連、東ヨーロッパ諸国)の地下教会や迫害のニュースなども、重視してきた。89年ベルリンの壁が崩壊し旧共産圏が開かれた後は、東欧の宣教事情に関する記事をフォロー。90年3月4日号では「聖書が足りない。東欧の教会に聖書を」と呼びかけている。

 時代のムーブメント
多様な宣教方策反映

時代のムーブメントも反映してきた。70〜80年代は、宣教学者のドナルド・マクギャブラン氏、フラー神学校教授のピーター・ワグナー氏らが提唱した教会成長論が注目を集めた。79年に日本教会成長研究所(JCGI)が設立されると、欧米から著名な講師を呼び、研修会が盛んに行われた。ノーマン・V・ピール氏が提唱した積極的可能性思考も注目を集めた。

80年代〜90年代以降、聖霊の働きを強調するカリスマ運動や第三の波運動が、世界各地でリバイバル的な急成長を見せた。日本にもその流れの著名な講師らが韓国、ラテンアメリカ、北米、アジア、アフリカから頻繁に来日する。本紙は、それら集会の様子を客観的に報じるだけでなく、福音派からの批判に対する講師の見解や、運動から感化を受けた人の信仰生活が実際にどう変化したかなども伝えた。

また90年代に入ると、欧米からアジア、アフリカなどへ宣教師を派遣する形が、被宣教国が宣教国へ変わることで、世界中の教会が宣教師を送り合う形へとパラダイム変換した。それに伴う様々な変化も伝えている。
2000年には、インターナショナルVIPクラブ(市村和夫代表)が各地に広がり、ビジネスマン伝道が注目を集めた。本紙はその動きを報道するだけでなく、02年からクリスチャンビジネスマンの仕事と信仰の証しを紹介するコーナーを設けた。このコーナーは15年たった今も続いている。

02年には、スポーツ伝道が注目を集めた。この年、日韓共催でワールドカップが開催され、日本でも韓国でも、スポーツを用いた伝道が展開された。これを機に、各教会でスポーツ伝道が広がっていったが、その様子を紙面で伝えている。

そのほか、弟子訓練やスモールグループ、MEBIGといった教会学校活性化プログラム、アートを使って福音を伝える「バイブル・アンド・アート・ミニストリーズ」など、枚挙にいとまがない。これからも時代を反映した宣教報道は続くだろう。 【中田 朗】

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クリスチャン新聞は、1967年5月にそれまで月刊で発行されていた『福音ジャーナル』を母体に創刊し、日曜礼拝を中心とするクリスチャンの生活サイクルに合わせ、同年11月からは週刊で発行してきました。

50周年を迎えた2017年には、4回の特集、2回の記念集会を実施しました。改めてこの50余年の報道の歴史を通して、戦後の諸教会の宣教の一端をご覧いただければ幸いです。

※毎週火曜、土曜に本オンラインで掲載します

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