5月30日号紙面:「コロナでも変化無し」もともと地域との関係薄い?JEA調査
JEA調査「コロナ禍の影響と福音派の教会開拓の現状」
発表資料から
出生率10%減と受洗者減を直視
日本福音同盟(JEA)加盟団体に向けたアンケート「コロナ禍の影響と福音派の教会開拓の現状」が実施され、その中間報告が第四回宣教研究部門担当者会議(5月10日、オンライン)で発表された。今回、アンケートを送付した1984の教会・団体から253の回答を得た。教団規模で回答を得ていないところもあり、6月のJEA総会では回答を補い発表する。【高橋良知】
個別のかかわりへ
礼拝出席については6割の教会が「減少」と回答した。担当の福井誠氏(バプ教会連合・玉川キリスト教会牧師)は「大規模の教会ほど減少した感覚が強かった。受洗者や新来会者も大規模教会ほど『減少』の回答。コロナ前から受洗準備をしていた数字も入ると思われるので、コロナ収束後さらに教勢が落ちる可能性がある。つまり、『データブック日本宣教のこれからが見えてくる』(2016年)では、人口動態を踏まえ、30年後のプロテスタント教会の教勢を予測している。「当時は、教勢の縮小を止めるためには、1年の成長率3%が必要になるとしたが、コロナ禍の影響で受洗者が減少し、さらに出生率も約10%低下したと言われることから、クリスチャン人口1%の壁を超えるには、成長率を大幅に上げる修正が生じている」とも述べた。一方「1割ほどの教会で受洗者や新来会者が増えているので、個別にインタビューして要因を明らかにしたい」と述べた。
教会員とのかかわり、地域とのかかわりについても大規模の教会ほど「減少」した。「もともとの働きの規模を反映しているだろう。変化しなかった教会はもともと地域とのかかわりが薄かったのかもしれない」
献金は半分の教会で減少したが、オンライン入金などの活用のためか、大規模教会で増加している教会が2割ある。
前向きな変化として、「オンラインで新来会者や教会から遠ざかっていた人がつながった」「大人数ではなく、個別のかかわりへの再認識」などがあった。
課題として「対面での関わりが減り、不足感がある」、「病気の人のところにいけない」、「子どもたちが集まる場がない」「若い人がおらず、オンラインに移行できない」
牧会方針の変化についても「原状復帰がいつできるか不明」「個人活動にシフトせざるを得ないが、リーダーの訓練が追いつかない」
コロナ禍後については、多くの教会では感染対策は続け、大規模な教会ほどオンラインを継続する傾向が見られた。
まとめとして、▽集合的、プログラム的かかわりから個別的かかわり▽経営・戦略的関心から聖霊の業への関心▽教職中心から信徒中心▽村社会、縦社会的な日本的文化を内包する教会から聖書的、初代教会的教会▽画一的な一致から多様性による一致▽高齢者の地域を飛び越えた教会出席から地元の教会への出席、などを挙げた。
「コロナ禍を『機会』とみるか単純に『疫病』とみるか。混迷している教会と、方向性に気づいたあるいは、見出している教会に分かれ、教会の本質的な機能に注目し、原点回帰する傾向がある。課題としては子ども、病人、高齢者のフォローがある」と分析した。
立ち止まって考える
続いて講演「社会に希望を与える教会~コロナ禍における教会の再形成~』と題して中西雅裕氏(ホーリネス・横浜教会牧師)がハガイ書2章15〜19節を引用して話した。「私たちは、神様が目的をもっておられることを知っている。立ち止まってよく考えるために、これまでしてきたことをストップさせられることが必要だったのかもしれない」と語った。
今後、礼拝、交わり、宣教の活動において対面とオンラインの併用が求められると予想する。「医療福祉関係者、高齢者など、対面の集会に戻れない人もいるだろう。宣教的にも見直しが必要だ。今まで健康で、時間が取れ、大人数が苦痛ではないいわゆる『強い人』中心の礼拝ではなかったか。オンラインはより多くの人が礼拝に参加できる可能性がある。ただ『オンライン弱者』への配慮も必要。礼拝出席、献金、奉仕参加についても変わる。一つの教会にとどまらない帰属意識のあまり強くない信徒たちも増えるだろう。そのため弟子訓練のあり方が重要になる」と述べた。
「交わりや学び、会議などに関して ある時はオンライン、ある時は対面の使い分けが求められる」
とも言う。
会議や交わりのあり方について、「オンラインで交通費や移動時間が節約できるが、会議を欠席しにくい。一方若い牧会者たちは同世代間のオンラインの交わりで励まされている」と話した。
家族への伝道からキリスト者としての生き方と教会のあり方の見直しも求められると指摘した。「礼拝のオンライン化で家族を誘いやすくなった人もいる。家庭が礼拝の場となったとき、夫婦、家族関係を見直さざるをえなくなった。成熟したクリスチャン家庭が期待される。日曜日家族と過ごす時間が増え、クリスチャンではない家族から孤立するのではなく、家族ととともに歩むことに目が向けられた。これは家の教会の基本の姿に通じる。日曜だけではなく、平日の信仰生活が問われる。そのためにも教会は一人ひとりと丁寧にかかわることが重要になる」と勧めた。
講演への応答として、三浦春壽氏(JECA・キリスト教朝顔教会牧師)は特別伝道集会中心の教会成長から個々のクリスチャンの成熟、身近な人に寄り添う生き方、人権を尊重する人間理解を聖書を通して深めることが大切だとした。
コロナ禍にあるインドの教会がアジア福音同盟に呼びかけた祈りの要請から学んだことを紹介し、「『神様のご主権を認め、あわれみを祈り求めないと乗り越えられない』と、弱さを率直に認め、ひざまづいて祈っていた姿勢に教えられた。私たちもコロナ禍での弱さを認め、御前にひざまずいて祈っていきたい。小グループでの御言葉の学びとともに、離れ離れでも心合わせて執り成しの祈りをしていく姿勢が大事」と励ました。