約100年前、国際連盟の事務次長として重要な役割を担ったのがキリスト者新渡戸稲造だ。『新渡戸稲造 1862ー1933〈新版〉 我、太平洋の橋とならん』(草原克豪著、藤原書店、4千620円税込、四六判)は教育、植民地学、国際理解・平和のテーマで新渡戸の働きをたどる。著者が注目するのは新渡戸の植民地学だ。新渡戸は植民地学の先駆であった札幌農学校で学び(後に勤務)、台湾総督府で勤務し、東京帝国大学植民地政策講座の初代教授でもあった。植民地原住民の利益を重視して、時に植民地政策を批判した。当時の国際情勢から満州政策を弁明したが、欧米からは批判された。新渡戸は1933年に亡くなるが、軍部は暴走し、日中戦争、太平洋戦争に突入する。

新渡戸門下の河井道南原繁らがかかわった戦後の教育基本法に注目する一方、著者は人格教育の観点から「教育勅語」を再評価している。今回の新版では渋沢栄一とのかかわりが加筆された。


『語り継ぐクリスチャン実話 あの日、ぼくらは 天の家、独立学園、杉原千畝 篇』(結城絵美子著、みなみななみ絵・漫画、千430円税込、いのちのことば社・フォレストブックス、A5変)では、「独立学園」の部で新渡戸や河井、内村鑑三、矢内原忠雄などが紹介される。独立学園設立者の鈴木弼美の娘和子の目線で、学校の成り立ち、戦中の迫害、戦後の平和が物語られる。「天の家」の部は軽井沢で困窮した子どもたちを受け入れた宣教師の働きを子どもたちの視点で振り返る。「杉原千畝」の部ではナチスに追われたユダヤ人を国外へ送る外交官の葛藤と決断が再現される。


「反セム主義」(反ユダヤ主義)のナチスに同調するドイツ・キリスト者らは旧約聖書を否定した。これに抵抗した一人の旧約学者の講演を集めた『ナチ時代に旧約聖書を読む フォン・ラート講演集』(G・フォン・ラート著、荒井章三編訳、2千310円、教文館、四六判)が刊行された。ラートが1934年にイェーナ大学に就任したころ、すでに同大学神学部はドイツ・キリスト者の拠点になりつつあった。その中で旧約の価値を主張した講演が本書に収録される。ラートは「旧約聖書が語る神がイエス・キリストの父であり、旧約聖書がすでにひそかに主とその到来について語っているという使徒とイエス・キリストの言葉を信じる」と力強く語る。

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