[レビュー]今ここで生きる聖書全体像の理解『聖書六十六巻を貫く一つの物語』評・高橋秀典
「イエス様を信じて天国に行こう!」という福音が多くの人の心をとらえた時代がありました。ただ、現代の多くの人は、死後の世界よりも、今ここで、何のために働くのか、心の底にある渇きがどのように満たされるのか、また不条理や不正がはびこる世界に希望はあるのかということなどに関心を持っているのではないでしょうか。実は、聖書の四分の三を占める旧約聖書にこそ、多くの現代人が持つ世界や人生への疑問の答えが記されています。
また長年の信者であっても、預言書に記されたイスラエル王国の完成の預言とエルサレム神殿に神の栄光が戻って来るという預言がイエス・キリストにおいて成就したという聖書の全体像を理解することは困難ではないでしょうか。
しかし、本書を読んでいただけるなら、神の救いの壮大なご計画を、全世界的な視点から見られるようになります。確かに死後のさばきを知ることは大切ですが、それ以上に、全世界に神の平和が実現するという福音の提示こそが今、求められているように思われます。なぜなら、多くの人々の関心は、「私個人の救い」よりも環境破壊への懸念など、「世界全体の救い」に向かっているからです。
私たちの教会では十数年かけて、礼拝説教の中で創世記からマラキ書に至る福音を語ってきました。本書に記されている内容はまさにその要約であると断言できます。聖書通読は、だれもが憧れることでしょうが、各書の内容を神の救いのご計画の全体像の中から理解することは困難を極めます。ですから、聖書をお持ちの方は。ぜひ本書を手元に置き、各書を理解する手引きにしていただきたいと思います。
本書は鎌野直人先生が一般の信徒の方々に聖書の全体像を二十年以上にわたって語ってこられたことの積み重ねとして、また聖書全体を理解したいと思われる方々との対話から生まれたものです。小生はこのような本が出版されることを待ち望んでいました。これほど要領を得た聖書の副読本には出会ったことがありません。ぜひ多くの方々にお読みいただきたいと切望しております。
(評・高橋秀典=立川福音自由教会牧師)
『聖書六十六巻を貫く一つの物語 神の壮大な計画』
鎌野直人著、
いのちのことば社
1,980円税込、B6判