【高齢者特集】家族と連携を密に看取りまで 三重県 三重ベタニヤ
三重県津市の社会福祉法人三重ベタニヤ(村上久理事長=松阪コミュニティ・チャーチ牧師)は、1983年に教会立の軽費老人ホームケアハウス「ベタニヤハウス」を開設以来、2005年法人設立から現在まで、津市では特別養護老人ホーム「アガぺホーム」、ベタニヤ在宅介護複合施設、松阪市では小規模多機能型居宅介護デイサービス「いこいの家」、地域密着型特別養護老人ホーム「グレイスホーム」、住宅型有料老人ホーム「ベタニヤシニアホーム」、を展開した。
理念としてきたのは、キリストの愛と奉仕の精神を基本に据え、キリストの愛をもって人々に仕え、人を大切にして、共に美しく年を重ねていくこと。今や地元でなくてはならない存在になったベタニヤの始まりは、教会の福音宣教の働きからだった。
1966年に津新町キリスト教会に赴任した村上牧師は、前任の宣教師から結核療養所の聖書研究会を引き継いだ。その研究会のメンバーだったのが、井上満さん。小学生で発病し、中学から療養所に入っていた。身寄りは父親だけの寂しい境遇だったが、療養所の多くの人に愛されていた。84年に47歳で亡くなったとき、死を悼む看護師たちから、「棺に入れてほしい」と手紙を託されたと、ベタニヤの足跡をつづった村上牧師の著書『ベタニヤ物語』にある。
井上さんが生前、村上牧師に託したのは、こつこつと貯めた預貯金だった。教会に献げたいという遺志を、遺された父が受け継いで、百数十万円の献金が教会で手渡された。この尊い献金をどう生かしたらいいのか。
「私たちの教会は療養所の伝道など、社会的に比較的弱い立場にある人々に対する重荷を与えられてきた。井上満氏のような立場にある人々の助けになる働きのために役立てることができれば、これこそ彼の志に報いることになるのではないか」(同書)
教会に「ベタニヤ建設基金」が創設され、9年後にケアハウス「ベタニヤ・ハウス」が竣工した。三重ベタニヤは、一人のクリスチャンが一粒の麦となって生み出された事業なのだ。
ベタニヤでは1年に1度、スタッフ全員の理念研修が行われている。理念の共有は、事業が拡大していけばいくほど大切になるため、常勤非常勤にかかわらず徹底している。津市のアガぺホームの管理責任者、松坂なおみさんは「理念があって初めて、真ん中に筋の通った仕事になる」と、確信している。
ホームのチャペルでは、週3回の礼拝が行われ、村上牧師のメッセージ、讃美歌を捧げるほか、ラジオ体操や季節に合った唱歌を歌うなど、バラエティー豊かなプログラムに、約40人が喜んで参加している。
3年に及ぶコロナ禍で、介護度3~5の入居者を擁するホームは危機に立たされた。それまで自由にできた家族との面会も断らざるを得なくなった。毎月入居者一人一人の家族に手紙で状況を説明し、対策を伝えた。
病院ではできない家族による看取りができたのは、特養ならではだった、、、、、、
(2023年04月30日号 04面掲載記事)
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ベタニヤでは1年に1度、スタッフ全員の理念研修が行われている。理念の共有は、事業が拡大していけばいくほど大切になるため、常勤非常勤にかかわらず徹底している。津市のアガぺホームの管理責任者、松坂なおみさんは「理念があって初めて、真ん中に筋の通った仕事になる」と、確信している。
ホームのチャペルでは、週3回の礼拝が行われ、村上牧師のメッセージ、讃美歌を捧げるほか、ラジオ体操や季節に合った唱歌を歌うなど、バラエティー豊かなプログラムに、約40人が喜んで参加している。
3年に及ぶコロナ禍で、介護度3~5の入居者を擁するホームは危機に立たされた。それまで自由にできた家族との面会も断らざるを得なくなった。毎月入居者一人一人の家族に手紙で状況を説明し、対策を伝えた。
病院ではできない家族による看取りができたのは、特養ならではだった。看取りに入った入居者のために、家族が感染対策をして最期を見送ることができるようにした。入居者も参加してキリスト教式のお別れ会を開き、思い出を語り、メッセージと賛美で送り出した。希望者はチャペルで葬儀を行った。常に家族と連携しながら、その人のために最善を尽くそうと努力を重ねてきた。
松坂さんは「ベタニヤは、ケアハウス、在宅支援そして特養と、地域のニーズに応えてきて今があります。多くの家族が、これ以上は無理というぎりぎりまで自宅で介護して、ここに来られ、やっと笑顔になり、良い家族関係が取り戻せる。ここに来て良かったと思ってもらえるようなケアをこれからも提供していきたいと願っています」と、話していた。
【藤原とみこ】