「これは教会の働きとしてやっています」

神奈川県川崎市のNSKK・中原キリスト教会(佐々木炎牧師)はNPO法人ホッとスペース中原を併設する。平日、一階礼拝堂はデイサービスに集う人々でにぎわっていた。「クリスチャンもクリスチャンでない人も共に過ごす。好みのグループに分かれてそれぞれの活動をする。職員が指示するのではなく、利用者が自由に過ごせることを大切にしている」と佐々木さんは言う。

奥の浴室からは車イスの男性が、スタッフに介助されて出てきた。スタッフの一人は同教会の伝道師。4人の伝道師が教会とNPO両方の働きに携わっている。「教会と別に『福祉施設の働き』があるのではなく、教会の機能として、ディアコニア、交わり、奉仕と言われる働きがあります」

4階建ての建物は、様々な背景の人が十数人住むシェアハウスでもある。近隣のいくつかのアパートにも二十数人が部屋を借りて共に生きている。「ここでは高齢者だけ、障がい者だけ、とせず、包括的にケアする。制度からもれる元受刑者、元引きこもり、ひとり親、児童養護施設卒業者、在日外国人といった方々も受け入れています」

今年改訂版が出た佐々木さんの著書『人は命だけでは生きられない』(いのちのことば社=写真下=)では、老いの意味や魂の触れ合いについて、利用者と介護者、相互の気づきが語られていた。

利用者と職員という境界線がないことも特徴の一つだ。もともと利用者だった人が職員となることもある。「経験した人しか分からない痛みを教えられる。病の当事者の職員もいて、朝出て来られない、連絡がない、ということもある。そういう人とも共に働き、『休んでいい』と互いに認め合う。そういう職場だからみなが働き続けられる。傷ついた人が、まず神様の愛で受け入れられる経験をする。すると自分自身を見ることができ、自分を愛することができる」と話した。クリスチャンではない職員の中から信仰を持つ人も現れている。

「コロナ禍で、各地で礼拝が中止され、礼拝だけが教会なのか、何が教会なのか、を改めて問われたのではないか。教会は建物ではない。地域そのものが教会と考えている。地域の目の前の一人ひとりに教会がかかわるとき、教会が変わる。教会員が世の中に出ていき、社会が変わる。そこに神の国の到来があります」

行政と関わる中で、宗教法人は、公共の福祉に貢献していくことも期待されていると、感じている。現状の制度にこぼれ落ちる人々のための働きを宗教が担い、その働きが認められ、新しい制度ができる。しかし、またその制度にこぼれる人たちのために、宗教が動く。教会が社会とかかわる循環ができます」

4人の伝道者はNPOの働きとともに、礼拝説教を交代で担う。佐々木さんは「ひとりの人ができることは限られている。次世代への働きの継承を考えている。若い人は面白い。若い人の『非常識』は、新しい常識になるからです、、、、、、、

2023年04月30日号 04面掲載記事)

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利用者と職員という境界線がないことも特徴の一つだ。もともと利用者だった人が職員となることもある。「経験した人しか分からない痛みを教えられる。病の当事者の職員もいて、朝出て来られない、連絡がない、ということもある。そういう人とも共に働き、『休んでいい』と互いに認め合う。そういう職場だからみなが働き続けられる。傷ついた人が、まず神様の愛で受け入れられる経験をする。すると自分自身を見ることができ、自分を愛することができる」と話した。クリスチャンではない職員の中から信仰を持つ人も現れている。

「コロナ禍で、各地で礼拝が中止され、礼拝だけが教会なのか、何が教会なのか、を改めて問われたのではないか。教会は建物ではない。地域そのものが教会と考えている。地域の目の前の一人ひとりに教会がかかわるとき、教会が変わる。教会員が世の中に出ていき、社会が変わる。そこに神の国の到来があります」

行政と関わる中で、宗教法人は、公共の福祉に貢献していくことも期待されていると、感じている。現状の制度にこぼれ落ちる人々のための働きを宗教が担い、その働きが認められ、新しい制度ができる。しかし、またその制度にこぼれる人たちのために、宗教が動く。教会が社会とかかわる循環ができます」

4人の伝道者はNPOの働きとともに、礼拝説教を交代で担う。佐々木さんは「ひとりの人ができることは限られている。次世代への働きの継承を考えている。若い人は面白い。若い人の『非常識』は、新しい常識になるからです」

伝道者の林義亜さんは「礼拝だけではなく、トータルに仕えていく。どれもイエス・キリストの働き。これが私の献身のかたちだと思う」と語る。地域に引きこもりの人を抱える家庭があることを知り、ケアマネジャーの働きと共にかかわっている。

今後数年で、子どものケアの働きを本格的に展開する。佐々木さんは「『普通』にさせようとする圧力の中で苦しんでいる子たちがいる。まず社会の側から変えていきたい」と話す。親子広場を開き、障がいの子をかかえた母親たちの必要に耳を傾けている。「高齢、障がい、子ども、貧困、などの包括的な相談事業にしたい」と展望している。
【高橋良知】