【レビュー】幅広さと預言者的視点が後進への足跡に 『コロナ後の教会の可能性』
評・吉岡契典=日本キリスト改革派板宿教会牧師
本書が提示する課題を見過ごしにすることはできない。日本クリスチャンアカデミーの共同研究企画として、幅広い教会から8人が集められ、それぞれがコロナ後の教会の在り方について執筆している。共同研究が企画された背景の一つには、スペイン風邪流行時に残された神学的考察の少なさへの反省があった。よって2022年のまだコロナ禍中に置かれていた諸教会から各執筆者によって紡ぎ出された本書の言葉は、貴重な後進への足跡でもある。
本書前半には、前書きに続いて5人の執筆者による論考が収められており、特にバプ同盟・駒込平和教会の渡邊さゆり牧師の言葉に預言者的視点を垣間見た。そこには、既に現実化をされてしまっている、コロナ禍への危機対応の一環と称してなされる為政者による強権的支配や、コロナ後のさらなる差別と格差の悪化が危惧されており、教会もまたその傾向にとらわれてしまっていないかとの問いかけがなされている。
本書後半部分には、コロナ禍における諸教会の実践を知るための資料となるインターネットアンケートと、その分析がなされている。さらに関西学院大学神学部の中道基夫教授により、ドイツ教会における同様のアンケートの紹介と分析が、比較対象として提示されている。
座長のカンバーランド長老キリスト教会田園教会の荒瀬牧彦牧師は、共同研究の目的を「日本の諸教会のための可能性の提示」であるとし、巻末において「霊的陪餐とオンライン聖餐をめぐって」、また「礼拝の『共に』を考え直す」などの論考を示す。教会は、オンラインの活用によって生じた、種々のあれかこれかの間の緊張関係に身を置きつつ、諸課題についての実践的な道を探り続けなければならず、そこに神からの所与としてのコロナ後の可能性が立ち現れるとの展望をもって総括されている。
コロナ禍を通じて諸教会が問われた種々の論点を、コンパクトかつラディカルになり過ぎないバランスの良さで把握することのできる良書である。
(評・吉岡契典=日本キリスト改革派板宿教会牧師)
『コロナ後の教会の可能性:危機下で問い直す教会・礼拝・宣教』
荒瀬牧彦、浦上 充、仲程愛美、吉岡恵生、片岡義博、渡邊さゆり、越川弘英、中道基夫、
キリスト新聞社 1,650円税込、A5判
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