碓井 真史 新潟青陵大学大学院教授/心理学者

「世のため人のため」 社会への証しになるように

私たちは、なぜ税金が優遇されているのだろうか。統一協会への解散命令報道をきっかけとして、考えてみたい。ただしここでは法律論議をするわけではなく、もっと素朴に考えてみたい。私たちが優遇されるのは、それは私たちの宗教法人が、世のため人のためになる公益団体だからだ。

宗教法人の公益性とは、単にボランティア活動などを指すだけではないだろう。教育基本法にも「宗教の社会生活における地位は、教育上これを尊重しなければならない」とあるように、社会は宗教の価値を認めている。

信仰者としては、熱心に信仰し伝道することこそが公益になると信じるだろう。しかし、統一協会の信者たちも、非常に熱心に信仰してきた。全財産を献金して韓国に送ることも、組織の指示で集団結婚することも、神のため家族の救いのため、人々のためである。オウム真理教による殺人行為も、それは相手を「ポア」し、地獄に落ちることを防ぐ善行だとされてきた。けれども、どんなに自分たちの教理に沿った行為でも、社会はそれを認めない。

2015年から17年にかけて、国宝や重要文化財の寺社に油がまかれる事件が発生した。容疑者は、アメリカ在住の日本人クリスチャンだった。彼は、日本のいくつかの教会でもメッセージを語るなど、日米で活躍している人物だった。カルトや異端の信者ではなかったのだ。

この行為は、彼なりの信仰に基づく熱心な行為だったことだろう。しかし、私たちは彼の行為を認めない。社会は激しく非難し、逮捕状も出た。もしもどこかのキリスト教団体が、こんな犯罪行為を続けるとしたら、公益性を疑われても仕方がないだろう。

今まで、キリスト教は評判の良い宗教だった。何かの宗教を信じるならキリスト教、と語る人も多かった。「坊主丸もうけ」などといった言葉はあるが、牧師に対する世間のイメージは、清く貧しく美しくだろうか。山田洋次監督の最新映画「こんにちは、母さん」に登場する牧師も、そんなイメージだった(あまり貧しくても困るが)。

しかし、そのイメージは崩れかけている。ネット情報を見れば、「行ってはいけないキリスト教会」といったタイトルで、危険とされるキリスト教諸団体の名前が挙がっている。私たちがよく知る団体名もある。私たちとしては反論したいし、誤解を解きたいと思う部分もある。だが同時に、社会的に非難されても仕方のない部分はないだろうか。

宗教法人法の専門家である藤原究氏は、「宗教団体、宗教法人と市民との意識の乖離(かいり)は、もはや危機的状況にある」と語る(「宗教団体の公益性と公益活動」)。例外的に税金を免除されている私たちには、説明責任がある。キリスト教福音派も、批判を軽視し手をこまねいていれば、宗教全体へのマイナスイメージの渦に巻き込まれていきかねない。人々からの評判が良いことは、伝道の第一歩だ。「神を賛美し、民全体から好意を持たれていた」(使徒の働き2:47)。

2023年11月12日号 03面掲載記事)

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