集いの趣旨説明をする宮本純子氏

昨年10月7日から始まった、イスラム組織ハマスとイスラエルの戦争から5か月あまり。現在、双方の間で休戦交渉が行われているが、見通しは全く立っていない。そんな中、「イスラエルの平和を願う集い」が3月3日、神奈川県の横浜市緑区民文化センター「みどりアートパーク」ホールで開かれた。主催はエターナル・ラブ・イスラエル。

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最初に、主催者代表の宮本純子氏が趣旨を説明。「戦争でなく平和な世界に生きていくため、互いを大切にし尊重するには、私たち一人一人の生き方にかかっている。聖書には『お互いに平和を保ちなさい』(Ⅰテサロニケ5・13)、『エルサレムの平和のために祈れ』(詩篇122・6)と書いてある。本日は日本からイスラエルの平和を願い、祈りを届けたい」と語った。

第一部は、国際政治学、中東地域研究専門の池田明史氏(東洋英和女学院大学名誉教授)が中東情勢をテーマに講演。「2月に入り、イスラエルは『完全勝利するまで戦う』と言い続けているが、完全勝利が何を意味するのかはっきりしない。ハマスは組織であると同時に運動体、イデオロギー(思想)だ。組織としてのハマスを壊滅できても運動体、イデオロギーとしてのハマスを消滅させるのは不可能だ。どこまでやったら戦争目的が達成できるのか明らかでない」

池田明史氏

「3月10日前後から、日の出から日没まで断食するラマダンが始まるが、この時期はパレスチナだけなく他のイスラム世界全体が神経質になる。国際社会はその前に、何とか休戦交渉がまとまることを願っている。当事者たちは非常に大きな岐路に立たされている」

ハマスの奇襲攻撃がイスラエルに与えた衝撃について、こう分析する。「第一次中東戦争では、9か月で6千500人の犠牲者を出したが、今回は1日で千200人。しかも240人が人質として連れていかれた。イスラエルは世界に名だたる情報王国。情報収集、分析は十分されていたが、『できるはずない』と評価していた。これが完全に裏目に出た」

「イスラエルはシリア、レバノンからの脅威も抱えている。それでもハマス殲滅(せんめつ)に邁進(まいしん)しているのは、抑止力が衰えてしまった焦燥感からだ。10月7日の攻撃で自信がぐらついた抑止力の再建が、今度の戦争の暗黙の了解であり、中途半端に終わらせられない」

イスラエルの曲を演奏する中田良氏(ピアノ)と中田有氏(チェロ)

今後の展望については、「イスラエルがハマスの軍事力を納得いくまでたたいた後、ガザをどう立て直すのか。パレスチナ自治政府か、国際機関による人道支援か。終わり方も含め、非常に不透明な状況だ」と語った。

第2部は、「イスラエルの平和を祈るコンサート」と題し、中田良氏のピアノと中田有氏のチェロによるアンサンブル。ヨアヒム・ストゥチェフスキー作曲「チェロとピアノのための6つのイスラエル・メロディー」など、イスラエルにちなんだ曲を披露した。ロビーには、聖地画の展示、聖地画ポストカードやキットパスの販売、平和の寄せ書きコーナーなどのブースも設置された。

宮本氏は「イスラエルがこれ以上、被害者にも加害者にもなってほしくない。双方には一度立ち止まってほしい。ここは共存しかないとも思っている。エターナル・ラブ・イスラエルは、この立ち位置で行動し、宣教していきます」と語った。