私が生まれ育った新潟福音教会には、ライフセンター新潟書店がありました。特別恵まれた環境にあったことを思い出せます。「お前ンチ本屋さんなん?」「儲かるん?」学校の友人の声が今も心に残っています。

教会の記念誌をめくると、1967年に新潟福音書店、長岡福音書店、いのちのことば社が三者共同の書店経営を新潟市内でスタート。この経営が困難となり5年後に打開策が。

①累積赤字を、地域教会といのちのことば社で折半負担とする。②新潟地域の文書伝道の拠点として、書店を教会内に置き、③経営はいのちのことば社直営として継続。④地域教会により委員会を構成し、各教会の文書伝道の一環として書店経営を支援する、等が決められました。感謝なことに、累計赤字の負担は、地域教会の献金により完済する事ができました。地域教会の協力による開催のコンサート、講演会等も祝され、地域に根ざした書店の恵みがあったようです。

しかし2004年2月、いのちのことば社より、再び累積赤字の説明あり、同月「支援委員会」立ち上げ、と記されています。書店経営は苦闘の連続でした。「ライフセンター委員会」が「ライフセンター支援委員会」となり今日に続いています。6年前に私が赴任して以来、2年副委員長、4年委員長を務めています。

23年春、三度目の報告がありました。経営継続の判断をせざるを得ない一年とのこと。本社から新潟県地域と教会の様子の視察があったことは思い出に残っています。そして、報告を受けて対応を検討した委員会の緊迫した空気。継続賛成、反対の意見がそれぞれに出ました。

「欲しい本はネットで買える」「新潟市内にはキリスト教書店がもう一店舗ある」「広い県内に対して、アクセスの良いとは言えない新潟書店が県下地域教会に益なのか」等の意見はそれぞれに正当な理由でした。しかしこれらの意見が出尽くしたように見えた時に、ある牧師が「教会が出来ることをもって支援すべきでは」と語り、書店のある恵みについての証しが続きました。

「お店に来ると癒やされるんです」。福音書店が教会の宣教の働きの一環として存在している意義が少しずつ共有されていった時間のように感じられました。会議はオンラインと対面のハイブリッドでしたが、このような時間を共有することが大切でした。色々な思いを持っている、様々な人たちが互いの言葉に耳を傾けながら、相手の顔を見ながら、時間を共有することです。

そして支援委員会としての一つの結論に向かいました。経営継続を目指して、支援献金の新体制を作り、教会への献金が呼びかけられました。献金については「書店なのだから売り上げ向上が筋ではないか」との意見が当然ありました。バランスの問題ではないかと思います。社会の経済的状況に関わらず、福音書店という独特な働きは、教会の献金によって支えることは必要なことだと考えています。キリスト教文書の必要性は、人の一般の必要に応えるものではなく、教会の宣教の働きに必要な道具だからです。だからといって経営状況を全く省みないということであってはならないわけですが。

現実、役に立った対策は「ぶんでんリレー」でした。通常の経営からは考えられない方法でしたが、地域教会の支援の意思が確認されたからこそ案が練られ、実行に移されました。これは、面積が広く、南北にも非常に長い新潟県の書店にとって、諸教会の協力があってこそですが、有効な手段となりました。売り上げへの貢献度は高く、品物が手に取って見られる機会が重要であることを改めて実感しました。また協力への思いがあればこそ、諸教会間の交わりの機会ともなっています。

新潟店の経営は大きな赤字が完全解消まであと一歩までたどり着き、継続となりました。新年度も緊張感が継続します。時代が新しくなったとしても、文書伝道は教会の宣教の働きの一部分をなす必須の働きとの理解がありますが、それと共に健全な経営とのバランスを眺めながら、出来る限りの支援を行なっていきたいと考えています。
(記・下川羊和〔よな〕=ライフセンター新潟書店支援委員会委員長、同盟基督・新潟福音教会牧師)

新潟書店の店頭

 

「ぶんでんリレー」新たな可能性

いのちのことば社は、20年以上前には20店舗以上の直営店があったが、現在は6店舗。またそれ以外のキリスト教書店も厳しい経営状況の中で毎年数店が閉店している。新潟店は昔から地域教会に支えられ、理想的なキリスト教書店だと考えていたが、支えられるだけでは限界がある。

「ぶんでんリレー」は地域教会に福音文書を委託して、蓋を開ければ即席キリスト教書店を教会内にオープンできる方式。2週間の販売期間を終えると次の教会にリレーされる。運搬は地域教会が担当。現在上越、下越と2ルートの31教会でリレーしている。同じ地域にある教会でも必ずしもつながりがあるわけではなく、今回の「ぶんでんリレー」を通して地域の教会間でのつながりが生まれている。また、委託した福音文書を手に取って見ることで、家族や友人への伝道に用いられている。

今回、このぶんでんリレーを通して、地域にキリスト教書店がある意味と可能性に気づかされた。そこから生まれるつながりや伝道に対する思いの共有、相互が助け合い、影響し合う中でできることがあるのではないだろうか。

どの地域でもキリスト教書店の継続は困難を極めている。地域のキリスト教書店が閉店するのは時代の流れの中で仕方のないことなのか。今回の新潟方式を通して、お互いが協力していくことで生まれる新しい宣教の可能性を感じている。書店が地域教会との連携を深め、共に宣教の一端を担えるようにと願っている。
(記・いのちのことば社 店舗担当)


小千谷市、小千谷福音キリスト教会での「ぶんでんリレー」で

 

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